■建築研究資料

ロマプリータ地震災害調査報告書 (1989年10月17日)

ロマプリータ地震災害調査報告書編集委員会

建築研究資料  No.72,  1990,  建設省建築研究所


<概要>

  この資料は,1989年10月17日のロマプリータ地震がもたらした災害に関する建築研究所による一連の現地調査結果をまとめたものである。本資料は5編で構成され,各編の概要は次のとおりである。

第1編  地震と地震動
  本地震の特徴を地震学及び地震工学的見地から資料をとりまとめたものである。
  地震の諸元,主な地震活動域をまとめるとともに,断層運動に基づく本震の発震機構を説明する。またカリフォルニア州において過去に得られた地震発生確率と本地震の関係を示した。
  カリフォルニア州における地震観測網の現状及び今回の地震で得られた地震観測記録の概要を説明し,付録には,米国の担当者から配布された観測記録の波形とスペクトルを示した。

第2編  地盤,地震動のサイトイフェクト,液状化
  サンフランシスコ・ベイ・エリアの地形・地質・地盤に関する既存資料をまとめるともに,1989年ロマ・プリータ地震で観測された強振動を用いて,地震動のサイトイフェクト・距離減衰の検討を行った。また,併せて,ベイ・エリア地方自治体協会(Association of Bay Area Governments,略称ABAG)の地震強度・地震被害予測の方法について妥当性の検討を行った。サイトイフェクト検討のため地震資料を補足する意味で,現地で行った常時微動測定結果についても報告する。さらに,地盤の液状化被害について,地盤資料・強震記録をもとに,ベイ・エリアの埋立地盤の液状化抵抗を算定し,ロマ・プリータ地震の液状化事例と比較することにより,H.B.Seed提案の簡易評価法の検討を行った。
  本地震ではベイ・エリアで顕著なサイトイフェクトが認められたこと,ABAGの地震強度予測法では地震域の加速度の予測式の精度の良さにもかかわらず,サイトイフェクトを定量的に過小評価しており,かつ距離減衰も危機側に評価していること,H.B.Seedによる液状化簡易予測法は今回の液状化被害と良く合っていることなどの結論を得た。

第3編  構造物の被害
  建築物と道路施設の被害を報告した。全壊した建築物の数は,約1,600棟に及び,建築物の被害は主に木造建築物と無補強組積造建築物に見られた。道路施設では,橋梁の落下や高架橋の崩壊等の被害が見られた。
 木造建築物の被害は,20世紀前半に建てられた比較的古い建築物に集中していた。被害原因としては,1階部分の耐力壁の不足やポニーウォール(基礎壁)のせん断抵抗力の不足が考えられる。

第4編  都市機能の被害と震後対策
  都市機能を支える各種の基盤システムが受けた被害をとりまとめ,都市機能に面的に甚大な被害を与える市街地大火に関連して,地震後どの程度出火があり,消防活動がどう展開されたかについて,地震時に現地に滞在していた体験に基づいて述べた。  また,地震後の行政の対応について述べるとともに,被災建物に対してどのような方法,体制で緊急診断が行われたかについて報告した。
  さらに,空間配置が都市の安全性に大きな影響を与えるとの観点から,地震後に被災者を収容するのにどのような空間が使用されたかについて述べた。また,これに関連して,付録で,事前の被害想定,各自治体の防災計画の概要を紹介した。

第5編  被害写真集
  本地震における被害写真を収録した。


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