■建築研究資料

1990年の千葉県茂原市の竜巻による建築物の被害調査報告

山口  修由   他

建築研究資料  No.78,  1992.3,  建設省建築研究所


<概要>

  1990年(平成2年)12月11日午後、千葉県内の各地で強風が吹き、被害が発生した。これらの強風の中でも特に、午後7時13分頃に茂原市で大規模な竜巻が発生した。茂原市での竜巻による被害は、わが国における竜巻史上、特筆すべき甚大なものであった。建設省建築研究所及び気象庁気象研究所では、この竜巻の実態を解明し建築物等の耐風対策の基礎資料を得るため、被害発生の翌日以降、茂原市を中心とした被害を調査した。
  その後、建築研究所と気象研究所は相互の調査成果を活かすため、共同研究「茂原市の竜巻の気流特性」を実施した。本報告書は、この竜巻による建築物等の被害調査の結果と、気象研究所との共同研究の成果をとりまとめたものである。
  調査では、千葉県庁および茂原市役所から被害の概要に関する情報を収集した。その後、茂原市高師地区を中心とした被災地域において、風向や風速を推定するための資料の収集、竜巻の移動方向や通過時刻についての住民の証言の収集および被災建物について位置や被害程度などを調べた。
  調査の結果をまとめると、竜巻は1990年12月11日19時13分頃に茂原市で発生し、北北東へ向かって約16m/s 程度の速度で移動した。構造物の被害からの推定した最大風速の下限値は78m/s  であった。被害の範囲は茂原市の高師、萩原町、上林、小林地区などを含む東西に平均で500〜600M、南北に約6.5kmの範囲であった。茂原市における被害は死者1名、負傷者73名、全壊82戸、半壊161戸、一部損壊1,504戸であった。その他、多数の電柱が折損し、約14,600戸で停電が発生した。被害を受けた建物の多くは木造であったが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物も被害を受けた。鉄筋コンクリート造の病院も被災し、窓ガラスのほとんどが破損した。この病院の内部を強風が吹き抜けたため、大量の飛散物が建物内に侵入して、病室では入院患者等が負傷した。その他では、大型ダンプカー、マイクロバスや多数の乗用車が転倒、飛散する等の被害を受けた。被災した建物からは、屋根板、瓦、外壁や看板などが剥離、飛散した。これらの飛散物は、他の建物の外壁や屋根に刺さる、穴をあけるなどの被害を与えた。また他の建物の窓ガラスを破壊し、割れた窓ガラスの破片と共に室内に侵入して、居住者を負傷させた。室内に侵入した強風は屋根を飛散させる要因となり、飛散した屋根の部材は飛散物となり、再び他の建物を破壊した。
  この竜巻の規模を最大風速の推定値などから推定すると、この竜巻はFujitaのトルネード風力スケールでF3(強烈)以上の階級であったと考えられる。


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