■建築研究報告

兵庫県南部地震における液状化・側方流動に関する研究

建築基礎における液状化・側方流動対策検討委員会(BTL 委員会)

建築研究報告 No.138,2000  建設省建築研究所


<概要>

 本報告は、液状化、側方流動、液状化対策の3視点から、以下の項目について3ヶ年にわたり実施した調査・研究活動の成果をとりまとめたものである。 (1)兵庫県南部地震において被害を受けた建物基礎調査、地盤調査、および、空中写真測量、 (2)過去の地震における構造物基礎被害の事例収集、および、液状化対策工の事例収集、 (3)詳細数値解析に基づいた建物基礎挙動の評価、 (4)液状化・側方流動に伴う地盤変位の予測法と液状化・側方流動地盤における杭応力の簡易算定法に関する検討。その結果、以下の知見が得られた。

  1. 杭傾斜計並びにテレビカメラを用いた杭基礎の被害調査から、液状化・側方流動層を含む地盤では、杭頭部に加え、液状化・側方流動層の上下境界面付近で杭被害が認められた。諸解析の結果、杭頭部の被害は上部構造からの慣性力の影響、液状化・側方流動層の上下境界面における被害は、液状化・側方流動層の大きな地盤変形により杭が強制変形させられた影響と考えられ、地盤変形が杭基礎被害に与える影響の極めて大きいことが示された。このような地盤変形の影響は現行の設計指針には採り入れられていないため、これを適切に評価し得る杭の設計手法、解析法を早急に確立する必要がある。

  2. 詳細数値解析では、地盤の加速度についてはいずれも液状化発生に伴う振幅の低減や長周期化など、地震観測結果の特徴を再現でき、大筋として観測値と対応する結果が得られた。変位についても、最大値はいずれも観測結果に近い値が得られた。一方、液状化後の詳細な挙動については、各モデルでサイクリックモビリティーなどの扱いが異なり、残留変位にも差異が生じた。

  3. 応答変位法で杭応力の解析を行う場合、いずれの事例でも一次元の有効応力解析結果に基づいて地盤変位を決定し、杭の曲げ剛性の非線形性、相互作用ばねの液状化や変位依存性による低減を考慮しているが、大筋として調査された杭の被害状況と対応する解析結果が得られた。従って、「一次元有効応力解析+応答変位法」は液状化地盤における杭応力の算定手法として有力な方法だと考えられる。

  4. 自重効果を考慮できる有効応力解析法の場合、護岸背面地盤の地表面の残留水平変位の空間的変化や杭体の変形モードなどを定性的に表現することができる。しかし、護岸から100m以上離れた地盤の変形については、解析的に評価することはできない。過剰間隙水圧比が100%を超えた状態での変形を考慮した地震応答に基づく地盤の残留変形解析法は、側方流動変形やそれに起因する杭基礎の残留変形をほぼ評価できる。

  5. 兵庫県南部地震に関する文献調査によって、サンドコンパクションパイル工法、ロッドコンパクション工法など液状化対策を主目的にした地盤改良工法に加え、圧密促進を目的として施工された地盤改良工法が、液状化対策を意図したわけではないにもかかわらず、液状化の程度の低減や直接基礎の沈下傾斜の抑制に効果があったこと、これらはおおむね施工後のN値の増加として評価可能であること、また、摩擦杭基礎と地盤改良を併用した建物、並びに、支持杭基礎と地盤改良を併用した建物では、被害はほとんど認められなかったこと等が明らかになった。

  6. 兵庫県南部地震の事例調査と事例解析から、格子状に地盤を固化した地中壁、RC地中壁などが、杭基礎建物の液状化・側方流動対策として効果があったことが確認できた。それらの理由としては、内部地盤のせん断変形抑制効果、側方流動による内部地盤の流失防止、内部の杭に働く地盤変形の影響の低減、上部構造から杭に作用する水平力の低減などが考えられる。一方、解析からは、杭先端が地中壁より深くなると、地中壁最下部深度の杭応力に影響がでること、地中壁の存在により短周期側で構造物への入力が大きくなることが分かった。


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