■建築研究報告

伊勢湾台風による名古屋市の市街地および建築物被害調査と防災計画

第1研究部・第3研究部

建築研究報告  No.33,  1960  建設省建築研究所


<概要>

  伊勢湾台風は、わが国台風史上最大級のものであり、それをまともに受けた名古屋市の惨害は人的物的にきわめて苛烈をきわめ、臨界工業都市のあり方に大きな反省の機会を与えるにいたった。
  名古屋市にあってはこの体験に基づき、復興に際し災害対策に万全を期すべく諸搬の準備がなされている。そのため、まず災害の要因を明確にすることの必要にせまられたが、市当局は災害後の応急措置に忙殺され、基本的な調査をおこなう余裕がなかったため、昨年11月16日に建設省建築研究所長宛に「建築防災に関する基本調査研究」という課題で、都市計画ならびに建築技術の分野からみた被災状況の調査と建築基準法第39条に基づく災害危険区域指定にともなう建築規制の原案作成方の依ョがあった。
  建築研究所にあってはその重要性に鑑み、名古屋市の依ョを快諾し市当局を全面的に援助することにきめ、昨年11月下旬から12月上旬にかけて現地調査をおこない、本年1月15日に調査結果の概要を「伊勢湾台風による名古屋市の市街地および建築物被害調査報告概要」の形でとりあえずまとめ、名古屋市を始め関係各方面に送付した。さらに、災害危険区域指定要綱案を作成の上、1月18日に市主脳部に説明し、その後各方面の意見を入れてこれを修正した第2次案をも作成した。
  また一方、科学技術庁資源調査会において、昨年10月19日に設けられた伊勢湾台風災害調査特別委員会にも参画し、われわれの災害地調査によってえられた資料を活用し、同委員会の調査報告書作成に協力してきた。
  その間、調査資料をいろいろの角度から検討し、ここに報告書として上梓することになったが、読み直してみると色々不備不満な個所が多い。
  本報告書は建築を通してみた都市災害調査報告書であるため、単に建築災害のみにとらわれず、建築物によって構成されている都市という視野からみていることが、従来の建築災害調査報告書と異なるところであって、本文の特色といえる。しかし一方、建築災害調査報告書であるならば、建築物としての災害状況の報告に終わらず、建築物を通してその災害の居住者に与えた影響、建築物の損害額、災害の建築市場への影響および災害危険区域指定による建築費割高に対する住民の負担能力などもあわせて調査する必要を感ずるものであるが、これらに対する調査検討をおこなっていない点を遺憾に思っている。こうした不備な個所は別の機会に研究することとして、一応の責を果たさせてもらうことにする。
  おわりに、災害復旧に際し十分な調査を基礎として施策をおこなわんとする市当局に敬意を表するとともに、われわれの調査に対し協力を惜まなかった方々に対し謝意を表するものである。

昭和35年3月31日
建設省建築研究所第1研究部長
工学博士  新  海    悟  郎

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