■建築研究報告

異常軟弱地盤の震害対策に関する研究

異常軟弱地盤震害対策研究グループ

建築研究報告  No.55,  1969  建設省建築研究所


<概要>

  1964年6月の新潟地震は,新潟市を中心とし,広範囲にわたって,建築物その他の構造物に甚大な被害をもたらした。その原因は,ゆるいちゅう積砂層の一時的な液状化現象によるものであって,地盤災害として国内はもちろん海外からも多大な注目を浴びた。
  全国的にみれば,わが国ではこのようなちゅう積砂層は,新潟以外にもいたるところに広く分布しており,とくに近年は産業の発展に伴って,臨海埋立地に多くの工業施設が建設されているが,これらの埋立土は,ゆるい砂層によって形成されているところが多い。
  このような砂質地盤が,強震時に,新潟地震がみられたような液状化を生ずる可能性をもっているかどうかは,都市計画上ならびに工業立地上,十分に考えなければならない防災上の重要問題である。そして,もし液状化の可能性があると判明した場合に,基礎工法上どんな対策を講ずればよいかという問題は,基礎構造の研究者に与えられた重要な課題であるといわなければならない。
  そこで,当研究所では,昭和40年度から3年間にわたって,この問題を特別研究課題としてとり上げ,砂質地盤の震害危険度の判定方法と地盤震害対策とに関する研究を継続して行った。研究の結果によれば,砂質地盤の液状化の様相は,決して単純なものではなく,いくつかの異なった型に分類することができ,しかもその機構は,いずれもきわめて複雑である。したがって定量的な解析は,なお今後の研究に残されたところが多いが,震害危険度判定のための基本的な方針および液状化対策として有効な基礎工法の概略を提案することができたことは,ひとつの成果と考えてよかろう。
  一方,最近における高層建築の耐震設計は,いわゆる動的解析によって行われており,また中層ないしは低層の建物も,しだいに動的な考察を設計にとり入れようとする傾向にある。しかし,これらの建物の振動挙動に対し,地盤および基礎の性状が,重要な影響をもっていることは明らかであるにもかかわらず,現状ではほとんどその効果が,正しい形でとり入れられているとはいうことができない。これは,地盤の性質がきわめて複雑であって,ことに動的な性状に関しては,その基本的な特性すらもいまだほとんど明らかにされておらず,また解析の結果と実状との間に比較検討なども,ほとんど行われていないということによるものと思われる。
  そこでさらにこの研究では,動的3軸圧縮試験機,土の減衰測定機などを試作して,実験室内における測定を行うとともに,松代地震を利用して各種基礎の地震応答を観測し,またエレベーター塔についての振動試験結果や地震応答記録を解析して,この種の問題に関しては,建物と地盤との相互作用に関するさらに深い考察が,とくに必要であることを指摘した。
  この報告書は,竹内の特別研究グループが,数回にわたる討論を経て作成したが,各研究項目の研究担当者とその協力者および報告書原案の執筆者は,下記のとおりである。
序文   大崎  純彦・小泉  安則
I-1 砂地盤の液状化の発生機構 小泉  安則・伊藤幸爾郎
I-2 標準貫入試験による砂の密度の測定方法 伊藤幸爾郎
I-3 動的3軸圧縮試験機,減衰試験機の試作と2,3の実験結果   岸田  英明  
I-4 濃尾・東南海および福井地震において液状化した砂の性質 岸田  英明
I-5 液状化過程における砂と基礎の挙動 吉成  元伸
I-6 結論 小泉  安則
II-1 地震応答の観測結果 岸田  英明
II-2 建物の地震応答に影響する諸因子の考察 和泉  正哲・岸田  英明
・坂本  功
II-3 地盤の減衰性に関する実験 岸田  英明・許  光  瑞
II-4 結論 岸田  英明



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