防犯まちづくり/犯罪を予防するために

 今年に入って全国的にひったくりが増えたと言われます。ひったくりは被害者が大けがをすることもある重大な犯罪です。これを防ぐことはできないでしょうか。
 ひったくりや空き巣、車上狙いなど、犯罪者にとって都合のいい状況(場所や時間)に、ふさわしい対象を見つけて遂行されるような犯罪を機会犯罪と呼びます。さまざまな犯罪の中でも、こうした機会犯罪は街頭の状況を操作することで防げると考えられています。
 ひったくりの起こった箇所を地図に落とすと、一様に分布するのではなく、局所的に集中する場所(ホットスポット)があることが分かります。こうした場所には、見通しが悪い、夜間照明が不十分である、歩道と車道が分離されていないなどの特徴があると言われます。そうした状況を変えることで、犯罪を予防することができる訳です。また、落書きやゴミの放置が犯罪を招くとする「割れ窓理論」は、海外の法律や施策にも応用されています。
 こうした知見を背景に、環境整備や管理、防犯活動などを通じて、犯罪や犯罪不安の起こりにくい状況を作り出す一連の取り組みを「防犯まちづくり」と呼んでいます。防犯まちづくりでは、さまざまな人々の参加による、地域特性に応じた多様な対策が望まれます。建築研究所では、防犯まちづくりに関する研究とその成果の普及を行っています。
 このように説明すると、敷居が高いと感じる人がいるかもしれませんが、多くの地域で防犯まちづくりの一歩が踏み出されています。それが、各小学校で作成されている安全マップです。これは、防犯まちづくりの考え方を学んだ子どもたちが、実際に地域を歩いて課題を発見し、模造紙上の地図にまとめるという取り組みです。
 安全マップはなにも子どもだけの活動ではありません。先進的な地域では、大人も大勢参加してマップを作っています。その成果は小学生の保護者や地域の関係者に幅広く配布され、情報共有が図られています。地域住民の情報共有は、地域で力を合わせて課題を解決する上での重要な要件です。
 日本は長らく治安の良さを誇ってきたこともあり、まちづくりによる防犯という考え方はまだ定着していません。まずは皆さんの身近な地域から、犯罪が起こりやすい状況になっていないか点検してみてください。
(建築研究所 住宅・都市研究グループ 樋野公宏)

【写真】久米小学校 安全・安心MAP  ※画像をクリックすると拡大します

久米小学校 安全・安心MAP(クリックで拡大します)


前のページに戻る



 所在地・交通案内
関連リンク
サイトマップ
お問い合わせ
リンク・著作権


国立研究開発法人 建築研究所, BUILDING RESEARCH INSTITUTE

(c) BRI All Rights Reserved