高い低い/どっちがよく揺れる?

 「クイズです。地震の時に、高い建物と低い建物は、どっちがよく揺れるかな?」。建築研究所に見学にやってくる子供たちに、いつも聞く質問です。ほとんどが「高い建物!」と元気に答えます。「じゃあ確かめてみよう」
 車の付いた台の上に、背の高さの違う板が並んでいます。「これから地震のつもりで台を揺らしてみるよ。どの板がよく揺れるかよく見ていてね」。台をつかんで、細かく前後に動かします。低い板が激しく揺れて、高い板はあまり揺れません。
 「あれ?背の低い板がよく揺れるよ。じゃあ、答えは低い建物かな?」。みんな不思議そうな顔をしています。「じゃあ揺らし方を変えてみよう」。今度は、ゆっくりと台を動かしてみます。すると背の高い板が揺れ出しました。低い板はびくとも動きません。「今度は背の高い板が揺れたね。どうしてだろう?」
 そうです。地震の時に、どの高さの建物がよく揺れるかは、地面の揺れ方によって違うのです。
その秘密を解くために、今度は板の先を指ではじいてみます。背の低い板はプルプルと細かく揺れて、背の高い板はゆっくりと揺れます。「見てごらん。建物は、みんな自分の大好きな揺れを持っているんだ。低い建物は細かい揺れが、高い建物はゆっくりした揺れが大好きなんだ。ひと揺れにかかる時間のことを”固有周期”というんだけど、同じ周期の揺れの地震が来ると、あっ、僕の揺れだ!って、大きく揺れ始める。これを”共振”というんだよ」とさりげなく、難しい概念を伝えます。
 建物を設計する時に考える地震の揺れは、比較的細かく激しい揺れです。ですから超高層ビルのように、固有周期が2秒から6秒くらいの長い建物はあまり共振しないので、安全だと言われています。
 ところが、超高層ビルを大きく揺らす「ゆっくりとした揺れ」が起きることが、最近の研究でわかってきました。この揺れのことを「長周期地震動」といいます。長周期地震動は、どこにでも起きるわけではありません。たとえば東京がある関東平野、名古屋がある濃尾平野、大阪がある大阪平野など、厚い盆地上の堆積層をもつ地域で発生することがわかっています。いずれの都市にも、たくさんの超高層ビルが建っていますね。
 では、もし将来、東海・東南海・南海地震といった巨大地震が起きたとしたら、長周期地震動によって超高層ビルはどれくらい大きく揺れるのでしょうか?計算では、東京にある40階建ての超高層ビルの最上階で、左右に3b近くも揺れるという結果が得られました。
 そんなに大きく揺れた時、部屋の中はいったいどうなるのでしょう?どうすれば安全に過ごすことができるのでしょう?それを調べるために当研究所では、超高層ビルの揺れを再現できる世界でも珍しい振動台を開発しました。これまでもこの台を用いて、超高層ビルでの家具の移動や転倒の割合、人の避難行動に与える影響などについて研究しています。機会があれば皆さんも、建築研究所で超高層ビルの揺れを体験してみませんか。

 (建築研究所 国際地震工学センター 斉藤大樹)

揺れのイメージ


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