建築研究所講演会

 (独)建築研究所と(一社)日本建設業連合会は、平成25年11月1日(金)、CIB(建築研究国際協議会)に所属する海外の建築分野の研究機関の幹部の方々にも、ご参加いただき、BIM(Building Information Modeling)と海外で近年提唱されているIDDS(Integrated Design and Delivery Solutions)をテーマとした国際セミナーを、以下のとおり、開催しました。
 BIM は、建築生産プロセスを通じて、品質や生産性を高める新しい手段として、建設業界で、実践と応用がはじまりつつあります。建築研究所においても、「建築物の技術基準への適合確認における電子申請等の技術に関する研究」をスタートさせています。 BIM とIDDS は、重なるところが多い概念です。海外と日本の目指す技術開発の方向性や課題、さらに背景について、共通点と相違点を確認し、意見交換の機会をもつことは、有意義だと考えられます。
 建築分野のBIMやIDDSの最新の動向に関心を持つ方は、どなたでも参加いただけます。※このイベントは終了しました。
→English Page(当日の発表は、英文パワポで行われました)

日時:平成25年11 月1 日(金) 開場9:30 イベント10:00-16:30

場所:すまい・るホール 
   文京区後楽1−4−10 住宅金融支援機構1F

主催:(独)建築研究所
共催:(一社)日本建設業連合会
後援: 国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人都市再生機構、清水建設(株)技術研究所、(株)大林組、鹿島建設(株)技術研究所、(公社)空気調和・衛生工学会、建築研究開発コンソーシアム、(一社)建築研究振興協会、(一社)日本建築学会、建築・住宅国際機構、(一社)住宅生産団体連合会、(一社)IAI日本


建築研究所建築生産研究グループ 武藤正樹主任研究員の発表
■プログラム概要
9:30 開場
10:00〜10:10 主催者挨拶 坂本雄三 建築研究所理事長
10:10〜10:20 CIB会長挨拶
  Dr. S. Shyam Sunder Senior Advisor for Laboratory
  Programs National Institute of Standards and
  Technology, USA
10:20〜10:30 CIB事務局長挨拶
  Wim Bakens CIB Secretary General
10:3012:00 CIB優先研究テーマIDDS・海外における研究開発動向の紹介
@フィンランド:建設における新しいビジネスモデル−フィンランド2013年BIM調査結果
   Ms. Helena Soimakallio MSc
   RIL - Finnish Association of Civil Engineers
フィンランドのBIMに関する調査結果「Building SMART Finland」が2013年8月に出版された。この調査結果は、特に2つの点で興味深いといえる。1つ目は、フィンランドが世界的なBIMのリーダーであるという評価を得ている点。2つめは、同じ調査のテンプレートがイギリス、ニュージーランド、カナダでも使用されたので、それによって比較を行うことが出来る点である。
調査結果を見ると、クライアントからの要求やコントラクターからのプレッシャーがBIM使用の強い要因になっているようだ。しかし他方では、多くのユーザーにとってBIMの採用はまだ明確な利益の増加にはつながっていない。おそらくこれは、BIMをビジネスチャンスとしてではなく、主に技術的ソリューションとして捉えているためである。明らかなのは、BIMの採用は要求が強く、継続的なプロセスであることである。実務においては、CADの登場以来の最大の変化であり、新しいツールへの投資だけでなく、コアなビジネスプロセスにおける新しいスキルと変化を求めている。
Aアラブ首長国連邦:建設におけるイノベーション・インテグレーションのダイナミクス
   Dr. Mohammed Dulaimi,
   British University in Dubai
GCC(湾岸協力会議)地域、特にUAE(アラブ首長国連邦)における建設産業は、国家建設の上で重要な役割を果たしている。積極的なビジネス環境と建設産業の骨組みの本質がBIMのようなイノベーションの採用を促し、可能にしている。この発表ではUAEを例に挙げ、GCC地域の建設産業の概要を紹介し、作業の統合化、先進技術の採用において建設産業が直面するチャレンジについて説明する。また、BIMがローカル産業にもたらした発展と情熱に光をあてる。
Bアメリカ:アメリカにおけるIDDSの展開
   Dr. S. Shyam Sunder Senior Advisor for Laboratory
   Programs National Institute of Standards and
   Technology, USA
日本においては、海外のさまざまな異なる条件のもとでも活発な活動をしている建設企業が多く存在している。例えば、日本で通常の契約には現に建設プロジェクトの関係者、関係企業間の調整が含まれているものの、海外の国々においては、それこそがBIMのメリットと考えられる。
従って、日本においては、BIMの推進力は海外ほど強くはないかもしれないが、(アメリカの)多くの建築家、エンジニア、建設業者、下請業者は将来的な建築・建設プロセスの合理化をめざしてBIMの普及に努めている。
13:00〜16:30 日本側の技術開発の事例発表
@「日本の建築生産とBIMについて」
   汐川 孝 日本建設業連合会 技術研究部会長
 日本の建築生産でのBIMの普及はまだまだ少ない。その理由は、日本は定額定期一括請負の契約であり、その中に工事間の調整も当然のように含まれてしまい、BIMのメリットを建築主が享受しがたく、BIM費用を工事費に上乗せしがたいためであろう。
 しかし、建築設計および建築生産の今後の合理化においてはBIMの役割は大きいと考えられており、各社とも粘り強くBIMの普及に取り組んでいる。そのいくつかの事例を次からの講演で紹介する。
A「クラウドサービスを利用したBIMプラットフォームの構築
 −「GlobalBIM」活用によるBIM展開−」
   遠藤 賢 鹿島建設 建築管理本部建築技術部 技術管理グループ
日本の建設会社にとっては、事業のフィールドは単に日本の中にとどまらず、グローバルなものとなっている。
 このセッションでは、鹿島建設における「BIM 中心の生産モデル」(BIM centric production model)と、世界的な協働体制のために、このシステムをどのように使っているかを紹介する。
B「3D・BIMによる生産合理化の展開」
   山崎 雄介 清水建設 技術研究所
最近の大規模な建設プロジェクトにおける3D / BIM アプリケーションの活用に焦点をあてた建設革新の実現を目指して、将来のコンピュータ・インテグレイティッド・コンストラクション(CIC)の方向性を提案することを、今回の話題とする予定である。
 また、 CIB W78 における以前の上記に関連する研究や議論についてもご紹介する予定である。
C「東京スカイツリー建設におけるBIM利用」
   宮川 宏 椛蝸ム組 建築本部 PD センター
東京スカイツリーは高さ634mの自立式電波塔である。塔体は約37,000ピースの丸鋼管で構成されている。この構造体の施工にはBIMの採用が不可欠であった。工場での鉄骨製作、現場での建方計画と計測管理、工程シミュレーション等にBIMを活用し、高い品質を確保した。
D「日本の住宅メーカーがめざすBIMの進化」
   雨宮豊、藤岡一郎 積水ハウス
 日本の住宅メーカーのシステムの歴史は、BIMの概念そのものだった。
 BIMと出会ったことで、さらに進化したシステムで、未来の戦略を描く。
E「建築物の技術基準への適合確認におけるBIM技術応用の検討」
  武藤正樹 (独)建築研究所 建築生産研究グループ主任研究員
 建築物の技術基準への適合確認業務の合理化にBIMや電子申請を導入することの期待が高い。現在、シンガポールを始め幾つかの国では、BIMを絡めた電子申請制度がすでに始まっている。
 建築研究所では、2013から2015年度にかけて、建築物の技術基準への適合確認におけるBIM技術応用の検討を行っており、中間的な検討結果を紹介する。
16:30 閉会
その他:同時通訳付。
問い合わせ先:
      ・独立行政法人 建築研究所
       所属 企画部・建築生産G 左海(さかい)、武藤
       電話 029-879-0631 (左海) 029- 864-6658 (武藤)
       E-mail bri@kenken.go.jp
 


2013CIB理事会のために来日されたCIB理事会メンバー等(丸の内駅舎への技術視察)

参考資料:
BIM とは
Building Information Modeling(ビルディングインフォメーションモデリング)の略。個別の部品、部材や空間情報で構成される3次元の建物形状データに、コスト、材料・仕上げ、管理情報などの属性データを追加し、建築物のデータベースを構築し、建築の企画、設計、施工から維持管理までのあらゆるプロセスでそれらの情報を積極的に活用しうる情報システムのことを指し、建築生産プロセス全般を大きく変革する可能性を有するとされています。

IDDSとは
Integrated Design and Delivery Solutionsの略。 「統合されたデザインと生産ソリューション」という意味であり、国際的に提唱されている新しい概念です。
研究ロードマップHP: http://cibworld.xs4all.nl/dl/publications/pub_373.pdf
今年5月に公表されたロードマップによれば、IDDSは、BIMなどの新しい生産プロセスを速やかに採用し、生産的な環境において高度な技能を持っている人々を組織して、絶え間ない改善により、建設部門を変革することをねらいとしています。 BIMなどの共同作業ツールや高度なスキルを使うことで、統合された情報や知識などを使って、構造的な建築生産プロセスの非効率さの最小化を図るとともに、プロジェクトのデザインから施工、管理までに得られる付加価値の増進を目指すものとされています。具体的な成果としては、@建設投資回収の早期化、A生産性向上によるコストダウン、B品質の持続的向上、CCO2削減などサステナブルな社会的効果が示されています。


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