住宅建設における品質管理技術移転に関する調査・研究

(建築研究所建築生産研究グループ)

 海外での建築技術協力に携わる際には、それぞれの国の国民性や現地の建設システムが日本と異なるために、日本で成功を収めている方法をそのまま技術移転してもなかなか思うような成果が上がらないことがあります。このような場合にどのように対処したらよいかという問題に何らかの指針を示すのが、本調査研究の目的であります。

 この調査・研究のためには、まず、うまく技術移転できない事例を収集し、それらの事例を生じた原因が何かを分析し、その上でどのように対処すればよいかを整理する必要があります。

 本調査研究の成果は、直接的には、JICA等を含めた技術移転に係わる方たちの参考資料として役立てていただく事を考えております。また、この調査を通じて品質管理と各国の国民性や建設を取り巻く社会システムとの関係が少しでも明らかとなれば、日本国内での品質管理の考え方をより広い観点から見ることが可能となり、新たな品質管理手法の確立への第一歩となると期待されます。

 上記の調査研究は、平成11年度に無事終了し、平成11年度 建設技術移転指針策定調査(4) (住宅建設における品質管理) 報告書、平成12年3月、建設省、社団法人国際建設技術協会、として公表されております。報告書に関する問い合わせは、http://www.idi.or.jp/にお願い致します。なお、上記調査研究のために実施した関連資料収集は今後も必要と考えており、資料を提供いただければ、今後の技術協力などの参考とさせて頂きたいと考えております。

発展途上国へ行かれた経験のある皆様への資料の提供依頼

 発展途上国に行かれた経験をお持ちの方は、皆、多かれ少なかれ建設現場での出来映えが日本と違うと感じた経験をお持ちだと思います。このような経験事例の収集を行っております。1例でも2例でもお手持ちの資料があれば、事例を的確に示す写真とその説明文、および可能であればそのような事例が発生した原因やそのような事例が発生しないように改善する上での現実的な対応方法などの作成にご協力ください。

 添付している事例見本は、インドネシアのあるプロジェクトを参考としてやや誇張して作成したものです。事例資料作成の参考にしていただければと思います。なお、事例写真については、プリントでもネガ(ポジ)でも結構ですし、デジタル情報として提供していただいても結構です。なお、ここで収集する事例は、事例集の形で整理するとともに、事例を通して各国の建設実態を知る上での参考としたいと考えております。

 調査へのご協力お願いいたします。

(問い合わせ先) 建築研究所 建築生産研究グループ 西山功
〒305-0802 つくば市立原1
TEL 81-298-64-6681
FAX 81-298-64-6772
EMAIL iq@kenken.go.jp

(最終更新日 平成13年9月16日)


<情報提供方法について>
以下の事例見本に準じた情報を提供ください。事例では建設現場名を「某プロジェクト」としておりますが、情報提供に際しては具体名をお知らせください。資料の利用時には匿名とすることも可能ですので、匿名を希望される場合はその旨もお知らせいただければ幸いです。

[事例見本]その1

国名

インドネシア

建設現場

集合住宅 某 プロジェクト

工事の工程

鉄筋工事

写真のタイトル

空飛ぶ作業員

写真の説明

鉄筋をクレーンで作業階まで運んでいる。玉掛けがうまくいかなかったためか、荷崩れしかかった 鉄筋を支えながら作業員がつり荷の鉄筋と一緒にクレーンのワイヤーにぶら下がっている。

写真

このような事態に至った理由

安全に対する認識が日本とは基本的に異なる。 これは、建設現場において、裸足の作業員が多いことやヘルメットなどつけている作業員もほとんどいないことからも明白である。また、玉掛けなどの資格もなく、荷を安定させることができないために人力で荷を安定させているとも見える。また、ちょうど作業階にあがりたい作業員がいたので、エレベータ代わりといったところかもしれない。

指導方法

安全に対する考え方は、各国の経済状況とも関連しているので、単に安全に注意するように指導しても難しい。何が良くて何が悪いかがはっきりわかるように、現場に安全作業の注意事項を表示するなどを行うことが肝要である。

[事例見本]その2

国名

インドネシア

建設現場

集合住宅 某 プロジェクト

工事の工程

コンクリート工事

写真のタイトル

一体化していないコンクリート打継部

写真の説明

下層階柱と上層階柱との芯ずれおよびコンクリート打継部分に生じた大きな隙間。

写真

このような事態に至った理由

ベンチマークの設置、レべラーの使用法を把握しない作業員が施工を行っているので、すべてに寸法精度が悪い。 このため、上下階での柱芯がずれてしまう。また、型枠の精度も悪いし、コンクリートの打継部分の処理を適切に行っていない(打継部に木片などのゴミがはさまっている)し、また、打設するコンクリートの監理をしていないので、豆板なども広範囲に生じている。作業員は、豆板は左官作業で覆い隠せば見てくれは良くなり問題はないと考えている。

指導方法

寸法精度を確保するための基本的事項を指導する必要がある。レべラーのような高級な機械は適切に使用できないので、水盛りのような基本的な方法を教育する必要がある。また、コンクリートの打ち継ぎに関する認識がないので、適切な作業標準を現場に掲示するなどが重要である。また、豆板についても限度見本などを示す必要がある。



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