まちづくりのルール/「皆と同じ」原則とその例外

 小話があります。多くの外国人が同乗する船が難破し、救命ボートを女性や子供が優先的に利用することを、船内の各国男性にどう説得するかです。船長はまず米国人に「ヒーローになれる」と熱く語り、次に英国人に「紳士精神の発揮が期待される」と丁重に、ドイツ人に「これがここでのルールである」と厳然と語った後で、最後に日本人に柔らかに言った「他の皆さん、そうされていますので…」。
 この「皆さんと同様に」という集団性の強いルールは、建築物の用途や高さ、規模、景観など街並みやまちづくりの場面では大切な原則です。
 店舗と住宅が隣り合って自動車の出入りや騒音などの問題が生じないよう、住宅、店舗、工場それぞれがまとまった快適性や利便性あるまちとすることで、商業地内には道路や駐車場を、また住宅地内には学校や公園を、それぞれ効率的・効果的に提供もできます。そして、このルールは、これを守らない者を見た人たちが、「赤信号、皆で渡ればこわくない」と考えて行動してしまうとまちの環境が一気に壊れかねない、緊張感ある原則でもあります。
 ところで、この原則には時代変化に対応した融通がきかない弱点もあります。戸建て住宅地の高齢化が抱く「車ではなく歩いて行ける範囲に、生活を支え、豊かにする買物や食事ができる店が欲しい。かといって、店が隣にあることは嫌だ」という矛盾するニーズにはどう応えるべきでしょう。このような店を特例的に認める知恵として、「住宅地の入口近くとか交差点の角など利便性のいい場所で、近隣への騒音対策をした場合に限ることとし、将来のまちの方向を考慮して特例扱いをしよう」という方向が考えられます。
 建築研究所では、まちづくりルールの原則の尊重とその例外に対する知恵とを、整った市街地が多く遵法意識も強いとされる米国、英国そしてドイツを参考にしつつ、探っています。
(建築研究所 住宅・都市研究グループ 飯田直彦)

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