木造の家/地震に強い家とは?

 写真の2棟の家を見比べてみてください。どちらも築31年の木造の家ですが、振動台実験で同時に揺らした結果、右の家は完全に倒壊し、左の家は倒れずに残りました。この差はどこから生まれたのでしょう。

2棟の家の振動実験結果
【写真】2棟の家の振動実験結果。無補強の右の家は倒壊したが、耐震補強を施した左の家は倒壊を免れた。(2005年11月文部科学省「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」による実験)

 かつて、木造の家は地震には必ずしも強くありませんでした。1891(明治24)年の濃尾地震や1923(大正11)年の関東地震などで木造の家が多数倒壊しています。大きな地震が来たら家から飛び出した方が良いと言われていました。
 一方、今日では、こうした大地震でも倒壊しない丈夫な家を建てる技術があり、建築基準にも反映されています。95年兵庫県南部地震では約10万棟の木造住宅が全壊となっていますが、調査をすると、当時の建築基準を満たすような家は、大きな被害を受けていないことがわかりました。
 地震に強い木造住宅をつくるポイントは、なんといっても壁の量です。50(昭和25)年に制定された建築基準法では、木造の建物には、各階、各方向に一定量の壁(筋かいという斜め材や、土壁や木ずりなどの壁を設けた軸組)を入れる規定がありました。数度の改正で数字などは変わりましたが、考え方は今の基準にも引き継がれています。
 また、今日では、壁を偏らないように配置し、壁端部の柱を土台や梁にしっかり接合し、床組や小屋組を隅の斜め材などで固め、基礎を鉄筋コンクリートとすることなども求められています。
 こうして新築の家は丈夫に建てられるようになりました。しかし、古い家は昔の基準で建てられていたりして、地震に対する性能が必ずしも十分とは限りません。ぜひ、専門家に耐震診断をしてもらうことをお勧めしますが、性能が不足していたら、壁の増設や補強、接合部や基礎の補強などを行って、丈夫な建物にすることが可能です。
 写真の左の家ですが、実は、筋かいや構造用合板を使って壁を補強し、壁端部の接合部に金物を取り付け、手前の下屋(1階の小さな屋根)の下の天井に構造用合板を張るといった補強がしてあります。その結果、兵庫県南部地震の揺れにも耐えることができたのです。
 耐震改修には費用が掛かりますが、それによって安全と安心が得られるとしたら、無駄な出費ではないはずです。地震が来ても家から飛び出す必要はありません。
 (建築研究所 構造研究グループ 河合直人)


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