室内環境の良さを伝える「新しいものさし」
「相隣環境を考慮した良質な室内環境の設計に資する評価指標と計測手法の開発(R7-9)」に関連する情報を発信しています。
目的
令和7年4月より省エネ基準適合が全面義務化され、エネルギー性能に関する指標として、一次エネルギー消費量やBEI、外皮性能としてはUA値やηA値、表示制度としてはZEHや
BELSなど、様々な性能指標が整備されてきました。一方、温熱環境、光・視環境といった室内環境の良さや、土地や相隣条件が与える影響については、依然として住まい手にとっ
て分かりやすい評価軸が不足しています。
そこで環境研究グループでは、運営費交付金による指定課題「相隣環境を考慮した良質な室内環境の設計に資する評価指標と計測手法の開発(令和7~9年度、研究代表:上席研究員 三浦尚志)」
に取り組み、住宅・小規模非住宅建築物における室内環境の良さを生活者が理解しやすい形で示す評価指標の構築を目指しています。
次世代の基盤となる新しい住宅用暖冷房計算システム TEMPENERGY
暖冷房エネルギー消費量の算定は、建物側の「負荷計算」と設備側の「エネルギー計算」に大別されます。従来の建築物省エネ法に基づく負荷計算手法は、外皮性能評価と居室単位の個別空調を前提とし、計算の簡略化・高速化に特化していました。 しかし、住宅性能の向上に伴う空調方式の多様化(全館空調や大空間設計等)を適切に評価できない課題が生じています。本プロジェクトでは、最新の省エネ手法を反映可能な次世代負荷計算ロジックを開発。 本サイトにてその成果公開と計算試行環境を提供します。
第2回シンポジウム(2026.01.30 17:00-19:00)
第2回のシンポジウムも、第1回と同様の主旨で開催し、より具体的な指標化の観点から議論を深めるため、鈴木大隆先生、前真之先生をお招きしました。 鈴木先生には、建築外皮技術の観点から、HEAT20の原点や北総研庁舎の設計のお話を踏まえ、技術の価値を住まい手に伝わる形で示すものさしづくりのあり方についてお話しいただきました。 前先生からは、GX時代の住宅性能のあり方として、快適な室内環境を実現する性能を特別なものではなく社会の標準としていく必要性と、その実現に向けた設計手法や指標の考え方についてお話しいただきました。 お二人の話題提供を通じて、住宅性能に関するものさしには、技術の価値を分かりやすく伝える役割と、望ましい性能水準を社会に普及させる役割の双方があることが示されました。 後半のパネルディスカッションでは、UA値やηAC値、省エネルギー性能といった既存の基準指標の役割と限界を確認しつつ、新たなものさしを設計支援として用いるのか、居住後の暮らしの快適性を支援するものとして用いるのかといった、 指標の目的について議論しました。また、作用温度や湿度の測定の難しさ、気密性能、温度分布や開口部のあり方に加え、季節による暑さ寒さへの慣れや住まい手による調整の余地なども論点となりました。 基準を満たせば十分という判定のための指標ではなく、設計者と住まい手が目指す室内環境を共有するためのものさしのあり方について意見を交わしました。
第1回シンポジウム(2025.12.22 17:00-19:00)
本シンポジウム「ここちよさを伝える新しいものさしを考えよう」は、専門家・実務者・研究者が横断的に意見交換し、「誰もが使える・分かる室内環境の新しいものさし」の検討を進める場として開催しました。 室内環境の研究や住宅設計の第一線で活躍する専門家を招き、今、現場で求められている「ここちよさの指標」とは何か、また良質な室内環境をどのように分かりやすく伝えるかについて、 講演、パネルディスカッション、皆様からお寄せいただいたご意見を通じて議論を深めました。
第1回のシンポジウムでは、多様な観点から「ここちよさ」とその指標化の可能性を考えることをテーマに、伊香賀俊治先生、三澤文子様、佐藤欣裕様をお招きしました。 伊香賀先生には、子供から高齢者までの健康を支える温熱・空気環境について、三澤様には、住まいの心地よさを生み出す材料や光・緑などの感性的な要素について、佐藤様には、開口部の設計や地域性、素材を活かした建築環境のあり方について話題提供をいただきました。 シンポジウム後半では、登壇者によるパネルディスカッションを行い、室温や放射温度、足元の温度、室間温度差、非居室の寒さといった健康に直結する指標の必要性に加え、 湿度や調湿、換気方式、開口や照明のあり方などについて幅広く議論しました。 参加者アンケートでは、「ここちよさ」のイメージについて、環境を意識せずに過ごせる中立的な状態として捉える意見が多く寄せられました。 また、期待する指標のあり方については、住まい手に伝わる分かりやすいもの、健康エビデンスと結びつくもの、温熱・光・空気質・音・心理などを含めて総合的に評価できるものなど、さまざまなご意見が寄せられました。