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ver.2.02 平成9年7月16日
建設省建築研究所第六研究部都市開発研究室
景観シミュレータは、建設省総合技術開発プロジェクト「美しい景観の創造技術の開発」(平成5−8年度)の一環として、建築研究所と土木研究所で共同開発した、フリーウェアであり、開発と平行していくつかのモデル現場に導入されると共に、デバッグが進んだ平成8年11月頃から、CD−ROMの形で関心のある一般ユーザーにも無償配布を開始し、平成9年5月からは建設省建築研究所のホームページから、インターネットを通じて一般公開を開始しています。本説明書で解説するのは、平成6年度までの開発内容をデバッグし実用に堪えるものにすると同時に、一通りの操作を自習するためのサンプル・データを付したものです。
いくつかのサブ・システムから成り立っており、エディタ・ビューワ機能中心の本体に加え、社会現象シュミレーションのモデルとしての都市開発サブシステム、既存のCAD等とデータのインポート・エクスポートのサービスを行う貿易サブシステム、景観データベースを検索・編集する幾つかのブラウザ、エディタ等があり、これらを雛型として、今後の現場での需要に柔軟に対応して関連周辺機能を拡充していくことが、プロジェクト終了後の課題となります。
本書においては、以下、主要なサブシステムについて、機能の骨子を説明します。
本システムは、3次元CGシステムに、景観検討の実務に必要な諸機能を作り込んだシステム・ソフトウェアである。フル3次元では、任意視点からの景観検討が可能であり、可視範囲解析等の先進の機能を実現しました。土木・建築・都市計画を適用分野としており、3種類の景観データベースに収録されたデータを組み合せてすばやく景観を構築することができます。3次元CG技術をベースとして、簡便な写真合成の機能も含め、幾何学的に正確な写真合成を可能としまし。テクスチュア・マッピングにより材質感を再現すると同時に、色彩・鏡面反射率・テクスチュアを経年別に定義できるマテリアルにより、時間と共に熟成したり劣化する質感を記述することを可能としています。
前述の通り、本システムは国費で開発したフリーウェアです。ゼロ・ベースで開発したために、再配布等は、ライセンス上の制約なしに、無償・無断で行うことが可能です。但し、知的所有権はあくまで建設省に所属しているので、何ら付加価値のないデッドコピーを有償で販売することについては、制約を設けています。無償であることが、合法コピーの条件です。
グラフィックス処理にOpenGLを採用し、基本的な処理をANSI−Cに従って記述した共通ライブラリとしてまとめているので、移植性が高い。マルチ・プラットフォームとして、現在は、下記の通りの機種で実装しています。
データ形式、内部処理について公開性が高く、本システムをベースとして機能を拡張していくことは容易です。現在、官民共同研究によりデータ作成を支援する機能を開発したり、別プロジェクトで、景観シミュレータを出力装置として位置づけた社会現象・都市現象のシミュレーションの機能を開発しつつあります。このことを支援するために、現在、データ形式、内部処理ライブラリ関数等について詳述した技術資料のとりまとめを進めています。
外国語への移植性についても、メッセージを集約する等の方法で対応しており、日韓科学技術協定に基づき、現在までにVer.2.02までの韓国語(ハングル)への移植が完了しています。
2.動作環境↓
(1)Unix版とパソコン版(DOS/V,98)
景観シミュレータは、マルチ・プラットフォームの考えに基づき、パソコンとUnixマシンの上で平行して開発されました。
Unix版は、基本的にX-Window系のGUIと、OpenGLが利用できる環境に移植可能ですが、現在は、主にシリコングラフィックス社製のIRISシリーズ(OSとしてUnix系のIRIX5.3以上を搭載)の上で使用されています。具体的には、Indy、Indigo2、Onyxといった機種で実際に動作確認しています。
パソコン版は、マイクロソフトのWin32によるGUI、やはりOpenGLが利用できる環境に移植可能です。実際にはWindowsNT3.51以上の環境を主なターゲットとして開発を進め、平成9年に入ってから、要望の多いWindows95に移植した場合に生じる障害に対処、2月末までに主要な問題を解決しました。
現在の段階では、パソコンの価格性能比がここ数年急速に向上したことから、性能的にもNTマシンの方がやや優勢です。高速グラフィック・ボードを搭載したパソコンは、ワークステーションを凌ぐ処理速度を実現しています。
WindowsNTとOpenGLが利用できる環境としては、この他にAlpha,Mips,PowerPC等をCPUをベースとしたパソコンがあります。但し、Intel系のソフトウェアをそのままインストールしても、エミュレーションにより走行するため、速度の面でCPUの性能を生かすことはできません。同じソース・コードを、これら各CPU専用のコンパイラで処理することにより、これらの性能を引き出すプログラムができますが、現在はまだ需要が大きくないために用意していません。バグが殆ど解決してから、要望に応じてリリースする計画です。
ここでは、主にパソコン版について説明します。
(2)必要なコンピュータの環境条件
a.OS(オペレーティング・システム)
WindowsNT 3.51/4.0または、Windows95と、Intel486以上のCPUを搭載したパソコン
b.ハードディスクの空き
配布中のCD−ROMをフルにインストールするためには、最低300MBの空きが必要です。容量の大半は、景観データベースのサンプルです。これらを用いることにより、容易に景観設計検討を進めることができます。ソフトを試すためには、最小限のデータで済ますことも可能です。殆どのデータを自作するユーザに向いています。建築分野のユーザであれば、土木施設の事例を説明するイメージデータは必要でないかも知れません。
c.メモリ
WindowsNTおよびWindows95では、仮想記憶機能により、少ないメモリでも基本的には実行可能ですが、速度に大きく影響します。景観シミュレータで簡単な写真合成などの処理を行うだけであれば、通常のワープロ等を使用するメモリ要求条件と大差ありません。地形データや、本格的な土木建築施設の3次元データを扱うためには、最低32MB以上に拡張したいところです。
d.CPU速度
WindowsNT/95が動作すれば、CPUが486マシンでも、写真合成等の簡単な操作は十分実行可能です。そこから先は、扱うデータの規模との関係、あるいはユーザーがどれだけのスピードを求めるか、という利用目的と関係します。例えば業務として関係者を集めての評価セッション等を行うためには、PentiumPROのマシンを用意する必要があるかも知れません。
表示処理速度は、CPUとグラフィック・ボードの関係で決定します。グラフィックス・ボードがOpenGLの機能をハードで支援している場合には、表示処理速度は格段に上昇します。その場合、CPUは、表示処理の間は、それが終了するのを待っているだけなので、CPUを速いものにしても全体のスループットはあまり向上しません。景観シミュレータは、マルチ・スレッドの処理を行っていないので、これまでテストした結果では、マルチCPUのマシンでも速度は基本的に同じです。但し、ファイルをロードする時間は、CPUの速度により大きく変わります。
これに対して、グラフィック・ボードがOpenGLをハード的に実施しない場合(仕様で「サポートする」と書かれていても、デプスバッファの解像度等の制約条件があって実際にはその機能が利用できない場合もある)には、OpenGLの機能をソフトウェアで代行します。この場合には、CPU速度が表示処理速度を決定することになります。
e.グラフィック・ボード
グラフィックス・ボードのOpenGL対応、未対応に関わらず、景観シミュレータは立ち上がりまが、実用面からは、以下の条件が満足されている必要があります。
画面サイズ:最低ヨコ800×タテ600。特に縦がこれよりも小さいと、ウィンドウがはみ出してしまい、様々の処理を指示するボタンが操作できなくなります。
色数:32000色以上が現実的です。256色以下では、形状を確認できるのみです。
3次元グラフィック処理:なくとも走行可能ですが、OpenGL対応グラフィックス・ボードが装備されていると、格段に速くなります。但し、ボードにより、この機能を利用するためには、画像のサイズを小さくしなければならなかったり、またデプス・バッファを16ビットにしなければならないものがあります。景観シミュレータでは、デプス・バッファを24ビット以上としないと、市街地等を表示した場合に建物の縁が鋸状になったりする現象が現れます。 現在、多くのOpenGL対応グラフィックス・ボードが発売され始めています。これらが有効かどうかについて、テスト結果を集約したいと考えています。
3.インストールの方法(景観シミュレータのセットアップ)
(1)インストールの内容
インストールは、(1)景観シミュレータの動作に必要なディレクトリ構成と実行形式を含むファイルを各システムの中に構成すること、(2)景観シミュレータにシステムの構成・動作環境を教える kdbms.set というコントロール・ファイルを、ユーザの動作環境に合わせて一部修正すること、(3)kdmbs.set の在り処を、KSIM_ENV という環境変数に設定し、各プログラムが認識できるようにすること、から成り立っています。WindowsNTでは、この全ての処理を、setup.exeというインストーラが自動的に実行します。95では現在、(3)をユーザーがautoexec.bat を各自の責任で書き換えることにより、実現するようになっています。
CD−ROMからインストールする場合、インストーラは、CD−ROM中の圧縮されたデータを解凍しながらサンプル・データを含めて250MB程度をインストールします。しかし、この領域の80%以上は、サンプル・データです。従って、小さな空き容量しかないシステムで、一時的に景観シミュレータのテストを行いたい場合のために、COMPACT版を用意してあります。この版では、約77MB程度のディスク空き容量を必要とします。
ネットワークからインストールする場合、平成9年5月時点では、配布中のCDと同一の内容がダウンロードできるようになっています。ユーザーのハードディスクの中に適当な(一時的)ディレクトリを作成し、この中に、
ftp://www1.kenken.go.jp/keikan/CD/setup/compact/
以下のファイル群をダウンロードし、setup.exe を実行することにより、CDからインストールしたのと同様のインストールが行われます。ネットワークからのインストールのためには、現在の道路事情ではfullsetは現実的ではないと思われます(一応用意してあります)。面倒でも、compact をまずインストールし、必要に応じて、必要なデータ(これも次第に拡充される予定)をインストールすることが現実的と思われます。ネットワークの運用状況・ユーザーの意見に基づいて、ダウンロードの環境は今後改善していく予定です。ユーザーが必要とするデータの分野によっても、必要な範囲は異なるでしょう。
(2)インストールの実際
インストーラは、WindowsNT用に作成されています。CD−ROMの
\INSTALL\SETUP.EXEを実行することにより、インストーラが立ち上がります。
95にインストールする場合、Autoexec.batをユーザーが書き換える必要があります。具体的には、Autoexec.batに、
SET KSIM_ENV=■■■¥KSIM¥BIN¥KDBMS.SET
という一行を加えます。■■■の部分は、ユーザーが景観シミュレータをインストールした場所で、例えばB:¥KEIKANというディレクトリにインストールした場合には、
SET KSIM_ENV=B:\KEIKAN\KSIM\BIN\KDBMS.SET
となります。
古いヴァージョンの95にインストールする場合、CD−ROMの\keikan\95ディレクトリから、OpenGL32.dllおよびGLU32.dllを、[keikan]\ksim\binまたはWindows95\systemにコピーする必要があります。WindowsNTと、95の両方を立ち上げ可能になっているシステムでは、競合しないように、後者にコピーする必要があります。NT用のOpenGLと、95用のOpenGLは異なっており、混用するとシステムが動きません。
最初からOpenGLが入った新しい版のWindows95を用いている場合、あるいは既にCADソフト等の導入に伴って上記の二つのdllがインストールされている場合には、最初からインストールされているものに上書きしないように注意する必要があります。
これ以外のコンポーネントとして、都市開発シミュレーション、およびデータ・コンバータがあります。CD−ROMの\KEIKAN\都市開発 および \KEIKAN\貿易ディレクトリを、先にインストーラによって作成した[KEIKAN]ディレクトリにコピーする(即ちKSIM,KDB等と横並び)のが便利です。これらの周辺コンポーネントのインストールは、マニュアルで行うようになっているので、ショートカットの作成、アイコンの登録等は、それぞれのシステムで行って下さい。
(3)アン・インストール
インストーラのアン・インストールを実行するか、または、[keikan]以下を削除します。
95の場合、autoexec.batからset KSIM_ENVの項目を削除し、 OpenGL32.dll、GLU32.dllをコピーした場合は、これらも削除します(残っていても実害はないとは思いますが)。
4.操作自習の手引き
(1)立ち上げ・終了↓
a.マルチタスク
景観シミュレータと関連するソフトウェアは、マルチタスク環境で実行できるようになっています。複数の景観シミュレータを実行させ、シミュレーション結果を一つの画面の上で横に並べて比較したり、都市開発シミュレーションやファイルコンバータを同時に走行させ、それらが生成したデータを直ちに受け取って表示するような使い方ができます。
景観データベースと景観シミュレータは、特に、有機的な関係で結ばれており、景観シミュレータの中で、風景の中に点景を配置する場合に、景観シミュレータの中からデータベースを起動して、検索結果を直ちに配置することができます。また、景観データベースの中に登録されている3次元形状を参照したい場合には、データベースが、機能を制約した景観シミュレータ、即ちデータを削除したり変更できないように制限した景観シミュレータを自動的に起動し、これにより検索した対象物を色々な角度から眺めることができます。
b.メイン・メニュー
景観シミュレーション・システムの様々のコンポーネントを起動するためのトップメニューがkeikan.exeです。ウィンドウズ版では、アイコンを登録することにより、あるいはデスクトップにショートカットを作成することにより、この機能をより使いやすい形で実現できるので、ユーザーはこの機能をあまり必要としないかも知れません。
c.景観シミュレータ
sim.exeである。これを起動するためには、メイン・メニューから景観シミュレータを起動する以外に、sim.exeにアイコンやショートカットを登録し、起動しやすい場所に置いておくことができます。筆者の下では、開発途上・デバッグ中の複数の実行形式を例えばsim0306.exe, sim0320.exe等の名前を付け並べておいて、選択的に起動して機能試験を行っている。
c.景観データベース・ブラウザ3種類
yuu.exe :優良景観事例データベース
kou.exe :景観構成要素データベース
zai.exe :景観材料データベース
なお、以上の実行形式は、keikan\ksim\binの下に置かれています。このディレクトリの中には、他にhsteel.exe、sphere.exe 等の名前をもつ実行形式が置かれています。これらは、単独で実行するソフトウェアではなく、景観シミュレータの中から、パラメトリックな形状を展開する際に呼び出されるものです。一定の規約に従って、ユーザーはこれらの能動的な景観部品を追加していくことが可能です。
d.都市開発シミュレーション
CD−ROMからコピーした都市開発ディレクトリの中の、fullscr.exeのショートカットまたはアイコンを登録し、これを実行します。
e.貿易
CD−ROMからコピーした貿易ディレクトリの中の、貿易.exeのショートカットまたはアイコンを登録し、これを実行します。
f.景観材料データベース入力用エディタ
景観データベースのうち、景観材料については、プロジェクト終了後も、追加・更新・削除を継続的に行う必要がある。このデータ入力は、景観材料各メーカーにより行われ、電子メールで集約されることとされている。この目的のために、配布される入力・編集用のツールである。
g.環境エディタ
景観シミュレーションを高度に利用しようとする場合、環境設定ファイルである kdbms.set を臨機応変に変える必要が生じる。この操作は、一般的なテキスト・エディタでも行えるが、個々のコマンドラインの意味を明らかにしながら、それをより簡便に行うためのエディタである。
(2)基本的な操作:ファイルを開いて、点景・情景を見る↓
図1:Image1.tif
a.ファイルを開く
システムが無事、立ち上がったら、サンプルのデータを開いて見るのが最も手軽に景観シミュレータの概要を理解する近道です。
・LSS−G形式とLSS−S形式
LSS−G形式は点景、LSS−G形式は情景です。いくつか選んで開いて頂ければ直感的にわかるでしょう。
b.視点移動
視点移動を行うためには、画面下部の回転・拡大縮小・シフトのボタンをクリック操作します。
対象物を回転・移動させると考えずに、「自分が矢印の向きに動く」、と考えて操作して下さい(あくまで景観なのですから)。
入力に使用した図面などから視点位置・注視方向等の座標値が判る場合には、[編集][視点座標]メニューで数値入力すると、正確なパースが得られます。対象物の手前が欠けて見える場合には、Near−Farによる、最近・最遠の範囲設定が不適切と考えられます(あまりに巨大あるいは微小な対象物を見ている場合)。その場合も視点座標メニューで、適切な値を設定します。但し、デプス・バッファのビット数が少ない場合(例えば16ビットの場合)、この幅を不必要に大きくすると、景観構成要素の縁が鋸状になったりします。
c.全体視界、初期表示
[表示][視点]で指定します。景観の中を動き回っている内に、自分がいる場所がわからなくなったり、対象物を見失った時に役立つ機能です。例えば後述の形状生成で、誤って巨大な物体を生成して、その中に自分が包み込まれてしまったような場合、全体視界の機能が救ってくれるでしょう。初期表示は、LSS−Sファイルを最初に開いた時の視点位置に戻してくれます。
d.パース、平面、立面、側面
[表示]で選びます。図面のように見たい場合に役立ちます。通常はパース(透視図)の状態で使用します。
e.グリッド
平面、立面、側面の時に、グリッドを表示します。対象物の大きさ等を見るときに便利です。
g.アンチエリアシング
CG特有の、ギザギザを解消するための機能です。そのかわり表示速度が遅くなるので、気に入った視点が見つかってから、じっくり見たり、印刷するときに使います。
操作例:[ファイル][開くLSS−G]で、例えば001_01.geo(街灯)を開いて、アンチエリアシングをONにし、精度を変えて、表示がどう変わるか比べて見て下さい。
h.終了
[ファイル][終了]で、景観シミュレータを終了します。
なお、大量のデータを処理した場合、メニューの終了ではなく、ウィンドウ・メニューの「閉じる」または95では×印をクリックする方が、速く終了します。
(3)マテリアル・テクスチュアの編集↓
図2:Image2.tif
hodou1.scn
図3:Image3.tif
hodou1.scn
編集をしたところ
[編集][マテリアル・テクスチュア]でこの機能を起動し、編集します。
対象物の表面仕上げの色彩、テクスチュア等を編集することができます。
対象物は、画面中の対象物をマウス・クリックで選択することにより縁に朱線が付いて強調表示されます。
仕上選択は、マテリアル・テクスチュア機能により指定します。この機能では、補助ウィンドウを開いたまま、次々と対象を替えて編集することができます。
対象物が構造化されている場合、親グループを選択し、一括して指定することもできます。また、選択モードを面にして、一つの面だけを編集することもできます。
カラーのラジオボタンを選ぶと、3原色をスライドバーで編集することができます。
マテリアル・モードでは、メニューの[登録色]から表示されるマテリアル表をまず選択し、その表の中の色項目を選びます。Nittoko.mtl を選ぶと、日塗工の標準色見本帳の色コードで材料の仕上色を選択することができます。
テクスチュア・ボタンを押すと、テクスチュア編集画面が表示されます。手軽には、自動貼り付けの機能で、試すことができます。上級向けには、自分でスキャナーで読み込んだテクスチュアを、位置・スケール・向き合わせを行って貼り付ける機能が提供されています。
この辺の操作性は、開発中のVer.3.0で格段に向上します。
(4)対象物の選択と移動・消去↓
Image5.tif
Image6.tif
点景や情景の中から、一部の対象物を選んで移動したり、消去したりすることができます。
この機能は、マテリアル・テクスチュアとは少し違い、最初に対象物を選択してから行ないます。
操作例:001_01.geoを開いて、街灯の一部をクリックして下さい。一部が赤くなると思います。そこで、[編集][消去]を行って下さい。どうなるでしょうか?
もう一度、同じものを開いて、街灯の一部をクリックしてから、今度は[編集][他選択][親グループ]を実行してから、[編集][消去]を実行して下さい。結果はどう違いますか?
更にもう一度、街灯を開き、上の部分を選択してから[編集][移動・回転・スケール] を開き、zに5と入力し、OKボタンを押して下さい。
このとき、「保存しますか」という質問には「いいえ」と答えて下さい。さもないと街灯が壊れたままになってしまいます。再度インストールすることになりかねません。
(5)光源の設定↓
Image7.tif
Image8.tif
光源の設定は、編集−光源設定で行います。ユーザーは、任意の地点に最大8まで光源を設定することができます。それぞれの光源には点光源か平行光源か、という条件と、光源の色・強さを指定することができる。便利な機能として、緯度経度・月日時分を入力し、計算ボタンを押すと、太陽の向きを自動計算します。
操作例:としては、例えばサンプルのGROUND1.SCN または GROUND2.SCNを開いて、パースまたは平面の表示としておいて、光源を様々に変化させ、どのように情景が変化するかを眺めると良い。また、反射の感じを見るためには、新規作成:LSS−Gで、形状生成を選び、原点付近に半径0.1m程度の球を発生。5させて、光源を変えて見ると良い。
背景写真との合成を行う場合には、背景写真と光源の向きを揃えておかないと、不自然になります。
情景によっては、太陽方位から決まる点光源だけでは、まるで月面のようにコントラストが強すぎる場合があります(特に、建築物だけの場合等)。このような場合には、太陽が例えば正午に南中している場合であっても、東、西、北にやや青みがかった弱い光源を配置すると、天空光を加味したような自然なライティングとなります。残念ながら、天空光(面)を設定するような機能は、現在のヴァージョンにはまだありません。
(6)様々の要素の配置↓
[編集][配置・コピー] Image9.tif
Image11.tif
地形や市街地データの上に、様々の施設や点景を配置することができます。配置機能は、LSS−Gデータ、景観データベースから検索した対象物、既に構築されている景観構成から選択した要素等に対して、用いることができます。
配置方法は、点配置のみならず、線配置・面配置が選択できます。
配置位置は、補助画面(平面図)の上で、マウスで指示します。
操作例:[ファイル][開くLSS−S]で、サンプル・データのhodou2.scn を開き、[編集][配置・コピー]で、細長く現れた歩道の平面図の上の適当な場所をクリックして、配置位置を指定し、物体選択欄をチェックして、すぐ右の1−5の番号のボタンをクリックします。すると、これから配置する物体の選択方法を聞いてきます。簡単にはLSS−Gから例えば 001_01.GEO を選ぶと、歩道上に街灯が現れるはずです。ここで、編集画面上の歩道上の別の場所をクリックすると、街灯があちこちに踊ります。また、配置実行を押してから、別の歩道上の場所をクリックすると、二つ目の街灯が現れます。リストを見て、様々の物体を歩道上に配置してみて下さい。
選択方法として、景観材料、構成要素から選ぶこともできます。この場合、それぞれに対応するデータベースが起動します(検索方法はデータベースの項を参照)。データベースの中で検索した対象物を画像表示=立体表示を行い(データベースから更に景観シミュレータが起動して表示された状態)、終了、終了で配置画面に戻ると、その対象物が選択された状態になります。
画面セレクションの方法では、メイン・ウィンドウで、画面中に既にある対象物を選択します。複雑なオブジェクトの場合等で、対象物の一部が選択された場合には、[編集][他選択][親グループ]の操作を、対象物全体が選択されるまで繰り返します。配置ウィンドウで「配置実行」ボタンを押すと、選択が完了します。その後の配置位置の指定は、その他の方法で選択した配置対象物の場合と同様です。
群として配置する場合には、線上配置(リニア)、線上配置(スプライン)、エリア配置が可能です。右上の最初に「単体配置」と表示されていた表示モードのコンボ・ボックスで指定します。
線上配置(リニア、スプライン)では、点のクリック→次 を繰り返して経路を指定します。リニアでは折れ線状の経路上に配置します。スプラインの場合、5点以上入力すると、それらを滑らかにつないだ曲線状の経路上に配置します。
エリア配置では、点のクリック→次 を繰り返して、エリアを囲む多角形を指定します。あとで配置実行を行った際に、最後の入力点と最初の入力点が自動的に結ばれて、閉じた多角形ができ、その範囲に配置されます。
群の配置では、次に[設定]のボタンを押し、複数の点景が選択されていれば、それぞれの比率を%で入力します。ここで注意しなければならない事は、比率が初期値0%となっていることです。従って、この設定を行う前に、配置実行ボタンを操作しても何も配置されません。点景が1種類しかない場合には、通常100%を指定します。これを例えば50%と指定すると、計算された配置ポイントのそれぞれに関して配置される確率が50%で配置しますので、半分間引いたような歯抜けの配置になります。
設定の中で、向き、高さの揺らぎを指定することができます。これにより、樹木等を配置しても、高さが一様になる不自然さを解消することができます。
選択した配置対象物を一様に傾けたり拡大縮小して配置したい場合には、[向き・スケールの詳細]のボタンを押して設定します。
以上の準備を終えた後に、配置実行ボタンを押すと、指定した線に沿って、あるいはエリアの範囲で自動配置されます。
操作例:[ファイル][開くLSS−G]で、東京都内のある場所の実測データから作った実際の都市空間に街灯や樹木や交通標識を配置していただきたい。向きは回転のZの欄(Z軸つまり縦軸まわりの回転角を示す)で調整する。視点位置が適当でないと、見えないので要注意。間違っても、LANDMARK.GEO等のような巨大な物体を配置しないでいただきたい。円谷プロの世界になります。
操作例:[ファイル][開くLSS−G]で、gsi.geo を開き、エリア配置の機能を使って、山腹の適当な範囲に、景観構成要素で検索したサクラを植林してみて下さい。この時、「地面」がチェックされていないと、海抜ゼロ(地下)に配置されてしまうので見えません。
また、市街地自動生成の結果を用いて、配置を行ったり、地形データの上に市街地自動生成の結果を配置して町を作ったり、様々の応用を工夫して下さい。
(7)背景を使う:写真合成↓
土木建築施設をこれから建設しようとする現場周辺の写真に、対象施設のデータを上書きすることにより、手軽に景観シミュレーションを行えます。
写真は、スキャナーで入力し、ファイル・コンバータによりSGI形式のファイルにします。
対象施設は、景観データベースから検索した過去の類例、CADデータからコンバータで作成したLSS−Gデータ、あるいは景観シミュレータの形状生成機能で作成したデータが利用できます。
対象施設を写真上の正しい位置に描くために、「視点抽出機能」が使えます。
原理は、単なる写真合成ではなく、背景となる写真の撮影位置・カメラアングルを復原計算し、これと同じ角度から構造物を眺めたパースを作り、重ねて表示することにより、正しい位置に写真合成を行います。従来は、経験と勘で行っていた作業を、支援しています。
a.背景イメージ・データの作り方
写真を作成し、スキャナーで取り込み、コンバータを用いて、SGI形式のイメージ・データを作成します。
まず、現場で写真を撮影します。このとき、現場付近の地図(例えば各地方公共団体が用意している2500分の1程度の地図や、道路台帳付図等)が用意できれば、その地図の上で位地が確認できる物件が映り込むように撮影すると、あとの作業が方法化できます。
これをフィルム・スキャナーがあれば良いのですが、無ければプリントしたものを、普通のスキャナーで取り込みます。この操作は、スキャナーに大概付属している読み取りのユーティリティー・ソフトを用いて、取り込みます。その後、ファイル出力するのですが、コンバータを利用するのが前提であれば、TIFFかBMPの形式が良いでしょう。GIFでは256色に落ちてしまうのでもったいない。できれば、この段階まで、24ビット(フルカラー)の情報が失われない経路を選ぶのが良いでしょう。
写真を取り込むまでに多くの苦労があるかも知れません。建築研究所でも苦労しました。イメージファイルには、様々の種類があります。しかし、OpenGLから出発した景観シミュレータでは、UNIXとの共通性を確保する観点からもSGI形式という特殊なイメージ・ファイル形式を標準としています。この形式は、スキャナー付属のソフト等はなかなかサポートしてくれず、作成するのに苦労しています。Macintosh上では、いくつかのイメージ・データ変換ソフトがあるのですが、Windows系では、まだ余りありません。
建築研究所では、結局のところ、米国のNorth Coast Software, Inc から発売され、テクノコムという販売元から売られていたConversion Artist というイメージファイルコンバータを筑波地元のパソコンショップで17800円で購入し、これで、スキャナーから出力したTIFF形式のファイルをRGB形式に変換し、名前だけを.RGBから.SGIに変えて使おうとした所動かず、デバッガでバイナリの中身を調べると、1バイト、必要な情報が欠落していたため、ここにパッチを当てるソフトを作り、貿易の中のコンバータに組み込んで実用に用いています。モニタ・ユーザーからの意見で、入手が難しいと言われたので、輸入本に確認した所、まだ販売していること、上記のバグを認識していること等をコメントとしていただきました。店頭になくとも取り寄せて入手することは可能のようです。いずれは、bmp2sgiといったコンバータを作らねばなるまい、と覚悟しております。
なお、イメージ・ファイルのコンバータの製作に取り掛かったことはあるのですが、例えばTIFFの場合、仕様書は入手可能ですが、様々のヴァリエーションを許すファイル形式なので、そのすべての仕様に対応するコンバータを作成することはかなりの労力です。当方にあるエプソンのGT6000付属のユーティリティが出力するTIFFに対応するものはすでにありますが、他の機種のものに対応できる保証はありま*.ん。
b.構造物のデータを用意する。
例えば、歩道の仕上げを検討するような場合には、単純な長方形のデータで十分です。これは景観シミュレータの形状生成(後述)の機能で作成し、適当な名前で保存しておきます。
複雑な構造物の場合には、CAD等で入力し、付属のコンバータで利用するのが楽です。
この時、地図の上に、CADで入力した時の座標軸を設定し、周辺の写真に移っている事物の座標がわかるようにしておきます。上記の、形状生成機能で例えば歩道の長方形を生成した時も、その座標が地図の上でわかるようにしておきます。
c.合成表示をする
まず、景観シミュレータで、[ファイル][新規作成LSS−S]を実行します。
次に、[編集][背景][設定]で、先ほど作成した背景の写真を設定すると、その写真だけが画面に表示されます。
更に、[ファイル][読み込みLSS−G]で、構造物のデータを読み込みます。
ここで、構造物が表示されますが、でたらめの位置です。視点移動のボタンを操作して、望む位置に持ってくることも可能ですが、自由度が位置と回転で6、視野角(焦点距離)の1を合わせた7次元もあるため、なかなか大変な作業です。試してみて下さい。
そこで次項の視点抽出機能を使います。これにより、構造物が正しい位置に吸い付きます。
(8)視点抽出機能↓
背景写真を、透視図と見なして、その中に写っている、座標値を明らかにできる対象物を手掛かりに、写真を撮影した視点位置、注視方向、視野角、傾斜角等を復元計算(標定)します。
これと同じパラメータで対象施設(3次元データ)の透視図を作成し、上描きすれば、正しい位置に収まります。
数学的には最低4点指定する必要があり、多くの点を与えた方が良い結果が得られます。
前項の、背景写真と、構造物が同時に表示され、位置はまだ合っていない状態から出発します。背景写真の中で、地図から座標が読み取れる場所、例えば隣の建物の隅とか、消火栓等を、クリックすると、そこに×が表示されます。次に、その物体の3次元座標値を入力し[次]のボタンを押します。この操作を最低4点について行います。意外な盲点は、例えば歩道の消点等で、これも目印になります。例えば東西に長い直線状の歩道が写っていれば、その消点に、YZはいい加減でも、Xの値として非常に大きな値(東であれば、10000等)を入力します。構造物を貼り付けたい大体の位置がわかればその場所に構造物の座標値を入力しても良いでしょう。
路面の仕上を検討する場合は、路面の大きさの水平の長方形を作成し(形状生成:原始図形:平面)、この四隅の座標値を、写真中の路面の長方形エリアと合わせることで簡単に位置合わせできます。その上でマテリアル・テクスチュアの編集を行えます。
やや変則的な使い方では、例えば、崖に擁壁を貼る場合には、その4隅に擁壁の座標値を指定しても良い。この場合、様壁はZ値ゼロの平面として作られていても大丈夫です(但し、東西X南北Y上下Zの原則は崩れますが)。
最後に入力した点は、次ボタンを押した時点で有効になります。これを怠ると、一つ少ないデータに基づいて計算を行います。
入力が終われば、計算のボタンを押してください。かなり長い計算時間の後に、OKが現れれば、メイン画面で構造物が正しい場所に貼り付いているはずです。NGが出ても、かなり正しい場合が多いと思います。NGが出るのは、正しい答えがない計算をやらされた場合です。その原因は、座標値入力ミスや、指定した参照点の誤認等です。その場合、最も疑わしい点が白い×印で表示されますので、再確認してください。点の画面上の指定が不正確な場合には、正しい地点を指示し直して下さい。また入力した座標値が誤っている場合には、数値を再入力して下さい。直した上で次入力を押すと有効になります。わからない場合には、その点を削除して下さい。
応用として、写真を撮影した大体の場所等がわかっている場合には、参考情報として入力してください。これは最終的な計算結果には影響しませんが、正解に近い場所から計算を始めることにより、計算時間を短縮するという効果があります。[視点情報]の[視点]をチェックした上で、XYZの座標値を入力します。
なお、3点以下で計算してもOKは出ます。しかし、この場合、計算問題としては解は無数にあるので、カメラ位置は、そのうちの一つを選んでいるに過ぎません。参照した点は正しい場所にパースされていますが、構造物は必ずしも正しい位置に来ません。
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お詫び:見え掛かりの処理が必要と考えています。つまり、例えば事例の YOUHEKI1.SCN のように、手前に樹木が見える擁壁の場合に、新しい擁壁を全部上描きしてしまうと、手前の樹木の部分も隠れてしまうからです。
このことは、現在の景観シミュレータでも原理的には可能です。即ち、背景以外に前景が用意できます。適当な画像処理ソフトを用いて、同じ背景写真から、構造物の手前にある樹木等のみを残し、残りを消去した(透明にした)画像を作成します。そして、これを前景として付け加えると、樹木が手前にあり、その後ろに構造物が、一番奥に背景写真がある画像を作ることができます。
このような編集機能が景観シミュレータの中にあれば、便利と考えておりますが、まだ実現していません。
(9)原始図形の生成・構成要素の生成↓
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a.パラメトリックな要素の生成について
景観シミュレータでは、市販のCADのような本格的な入力システム(いわゆるモデラー)を開発することには、あまり勢力を投入しないという方針で開発を進めました。建設省では既に共通のCADを導入している現場もあるため、景観シミュレータでは、個別的な設計を行った対象物については、CADからデータ・コンバータで持ってきたデータと、景観データベースに登録済みの部品を配置・移動・編集することにより景観モデルをすばやく構築することをねらっています。
しかしながら、最低限の形状生成機能は用意しています。幾何学的な基本となる原始図形、景観検討で頻繁に必要となる基本構成要素、及び既存地形を加工する、やや高度な処理を行っている道路法面生成です。
b.原始図形の生成
原始図形としては、直方体、球、円柱、円錐・円錐台、角柱、角錐・角錐台、平面図形等が実装されています。これらの形状生成処理の多くは、パラメトリックな部品として外部関数化されているので、表示においては、メッシュ状に見えますが、外部ファイル、メモリ上のデータとしては、余り重くはなっていません。但し、ユーザがその一部だけ削除したり、表面仕上等の編集を行って再度保存すると、多角形の集合体に分解され、大きなデータになります。例えば球は、多くの面によって近似しますが、一つ一つを作ると、膨大なデータにすぐなります。しかし、球の存在を定義するためには、このメニューで指示する中心座標と半径、という4のパラメータで十分であり、メモリの大幅な節約につながります。つまり、球を「パラメトリックな部品」として定義したことになります。
[形状生成][原始図形]から、球を選び、半径を例えば0.5に設定して、[OK]を押すと、一瞬コンソールが現れて外部関数が実行され、形状が生成します。半径を大きくすると何も見えません。これは、あなたが発生した球の中に入ってしまったからかも知れません。その場合には、[表示][視点][全体視界]を選ぶことによって、とりあえず全体がどうなっているのかを確認することができます。
ここで注意すべき点として、例えば、市街地の中に形状生成で何かを作ろうとします。国土地理院の座標系で市街地のデータができている(例えば、LSS−GのMACHINAMI.GEO等)の場合、それは原点から100km以上離れた場所に、差し渡し高々数100Mのオブジェクトが存在することになります。そこでうっかり原点付近に小さな(例えば半径1mの)球を生成してしまうと、全体視界で見ようとしても、あまりにも広い(数十キロの領域)に小さな町が一つと、それからはるか隔たった座標の原点付近に小さな球があるだけなので、それらの両方を同時に視野に入れようとする「全体視界」では何も見えません。よほど目の良い人は、小さな点を見つけるかも知れません。これはかなり危険な操作です。このようなLSS−Gファイルを一度作ってしまうと、後の処理が大変です。このような場合、別の景観シミュレータのセッションで、新規作成で形状生成:球を実行し、その結果を適当な名前で保存しておいて、配置機能を用いて町並の中に配置すれば、間違いがありません。
c.構成要素の生成
原始図形で説明したパラメトリックな部品の概念を少し応用して、少し複雑な図形を生成します。モデルとして、型鋼を生成する機能を組み込んであります。
操作例:[ファイル][新規作成LSS−G]の状態で[形状生成][基本構成要素][型鋼]を選んで下さい。特殊なメニューが現れます。L型鋼を選んで、A=1, B=1, C=0.5, D=0.1, H=1 と設定し、[OK]を押して下さい。ベンチのような形状が生成します。
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囲み記事:
道路、河川の生成では、まず断面を定義する小さなLSS−G形式の形状データを作成し、そのファイル名をLSS−Gデータと同じディレクトリにあるROADSEC.SETまたはRIVERSEC.SETという登録ファイルに登録します。次に、道路のパラメータ設定ウィンドウで、断面を選択した上で、中心線の軌跡を、マウスクリックと「次入力」の繰り返しにより指定します。この時、次入力ボタンの前にZ値を指定(数値入力)すると、立体的な道路や河川も構築することができます。次に、実行ボタンを押すと、その断面形を移動経路に沿って掃引した道路が自動生成されます。断面データのうち、歩道、車道、縁石、センターライン、中央分離帯等の各部にマテリアル情報を与えておくと、生成する3次元的な道路にも同じマテリアルが指定されます。
(10)地形データの利用↓
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a.地形データの作成
地形データを作成するには、ステレオ空中写真自動解析技術を利用することができます。この技術は、平成5〜6年度に建設省国土地理院が建設技術評価制度により民間6社の技術を認定したもので、空中写真から標高を自動解析したDTMデータを生成します。測量会社等では、既にデータ作成業務を営業開始しています。 景観シミュレータでは、このDTMデータからコンバータでLSS−Gデータを生成し利用します。データの巨大化に対応した間引処理等を開発しました。
コンバータの操作風景(メニュー)
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建設技術評価に応募した各社がステレオ空中写真自動解析の結果について審査を受けるために地理院に提出したファイル形式(dtm, dem)は共通であり、各社共コンバータを開発済みなので、これを利用しています。
データを作成するためには、地理院の2万分の1空中写真(全国カバー、但し撮影時期は様々。欲しい場所の写真が新しいものだと幸運です)、または、独自に飛行機を飛ばして撮影したステレオ空中写真を利用します。これを、上記の評価に合格した測量会社等に持ち込み、データ解析を依頼すると、データカートリッジやDAT等の形でデータが入手できます。これを、貿易ファイル・コンバータにかけて、.geoファイルに変換します。なお、その際に、データの存在範囲、使用座標系等についての補足情報を、詳細設定のメニューの中で入力します。(詳しくは、ファイル・コンバータの章を参照)。
なお、ファイル・コンバータにより生成した地形データの .geo ファイルは、一般の物体を記述した .geo ファイルと異なり、特に「地形である」という属性情報が付加されています。これにより、任意地点の歩行者の視点の高さを求めたり、地形に対して盛土切土等の加工を施すことが可能となります。
地形データを作成した後で、配置機能等を用いて設計対象物を配置したり、可視範囲解析を行ったり、道路法面自動生成等の機能を利用できます。その結果は、新たなLSS−Gファイルとして保存することができます。
三陸海岸の地形データを利用した経験では、128MBを搭載したPentiumPROマシンでも、1.5km×5km程度の領域について、間引かないデータ(2mメッシュ)は表示できませんでした。間引き率5(10mメッシュ)が漸く実用的な速度で表示できました。パソコンの更なる性能向上に期待したい所です。10mメッシュでは、道路や線路の形まで何とか見えてきます。
コンバータのメニューの中で選択することにより、自動解析の元データとなった空中写真自体を基に、解析結果に自然の色彩を付けることもできます。
(11)可視範囲の解析・視点設定・移動経路設定↓
地形データが用意されていると、可視範囲の解析、平面図からの視点設定、移動経路の設定(アニメーション)が行えます。これらの機能は、いずれもLSS−S のデータ(情景)に対して適用されます。LSS−G形式のデータしかまだない場合には、[ファイル][新規作成LSS−S]とした上で、[ファイル][読み込みLSS−G]とします。また、これらの機能は、解析・設定の対象物(何を見たいか)が指定されている必要があるので、まず対象物を選択してから、これらの機能を起動して下さい。
a.可視範囲解析
対象物のみをパースした場合と比較して、全ての景観構成要素をパースした場合の、対象物の見える部分のパース上での面積比率を可視率とし、指定された範囲をメッシュに切って各メッシュの中心の、地面から指定された高さの視点についてこの可視率を計算し、その分布を表示する機能です。
この機能は、まず可視範囲を解析したい対象物をメイン・ウィンドウで選択してから、[編集]−[視点設定]−[可視範囲解析]で設定ウィンドウを開き平面図を表示します。
解析結果は、視点設定や移動経路指定でも参照できます。
解析精度は、解析範囲を分割する桝目の細かさで、利用者が指定できます(初期値100m)。解析結果の表示は、全て見える場合を赤、全く見えない場合を青とし、対象物の見付で何割が見えるかを地図の上に色塗り表示します。
解析結果は記憶され、視点設定や移動経路指定の作業の中で参照することができます。
なお、この操作を行うためには、窓を開く前に、検討対象を指定しておく必要があります。
解析範囲は、範囲指定ボタンを押してから、範囲の左上の隅をマウス・クリックし、そのまま範囲の右下までドラッグして、ボタンを離すことにより、長方形の範囲として指定できます。
諸条件の設定が終わると、「解析開始」のボタンを押して解析をします。終了すると、可視率の分布が色で表示されます。この解析結果は、視点設定、移動経路設定で参考情報として表示することができます。
b.視点位置制御機能:視点設定
[編集]−[視点設定]−[視点設定]で起動します。平面図の上で地点を指定することにより、その地点での歩行者、子供、自動車運転者等の視点高さから対象物を眺めた景観を指定する機能です。
設定ウィンドウ(平面図)の中で、地点を指定すると、メイン・ウィンドウの中で、そこから眺めた景観を直ちに表示します。視点の高さについては、歩行者、自動車運転者、子供の視点高さを選択できるほか、直接数値入力することにより地面からの任意の高さが指定できます。これにより、正確な地点から眺めた景観を検討することが可能になります。
仰角は、0度で真下を見下ろす角度、90度で水平、180度で見上げる角度です。
焦点距離は、35mmカメラのf:28、f:35を選択できます。数値入力した場合は(何故か)度で計った視野角(タテ)がセットされるようにしました(従って、焦点距離ではない)。異論が多ければ直します。
c.視点位置制御機能:移動経路設定
例えば、将来の道路計画線等に沿った景観の展開を検討できます。
[編集]−[視点設定]−[移動経路]で設定ウィンドウを開きます。
地図窓の中で、例えば道路計画線等に沿った移動経路を指定し、それに沿って視点を移動する。眺める方向として、対象物固定と、正面(移動方向)が選択できます。
Ver.2.02以降では、形状生成により作成した道路にも「地面」としての属性が付くので、その上で走行シミュレーションを行うことができます。
正面を見ながら移動する場合(走行シミュレーション)、対象物は何でも良いので、もし選択を示す強調表示がうるさければ、視野に入らない目立たない物体を選択してからこの機能を起動して下さい。移動速度は、機器の処理能力によって異なりますが、移動間隔を調整することにより、変えることができます。
移動経路は、「経路入力」ボタンを押してから、次々と点をマウス・クリックすることで指定できます。設定が終わってから、走行開始・一時停止・再開・リワインド等の操作は、テープレコーダーと同じ感覚です。
移動の間隔は、経路入力で指定した点の間の分割数を示すので、数値が大きい程小刻みに移動し、従って速度は低下します。また、この間隔は、曲線入力(スプライン近似)の場合のみ有効です。この辺の操作性は、まだあまり洗練されていません。改善する必要を感じています。前述の通り、経路入力の時点で、以前に行った可視範囲解析結果を表示し、参考にすることもできます。また、途中で一時停止して、シャッターで適当に保存する、といった使い方もできます。その場合、この機能を終了し、メイン・ウィンドウに戻ってからも、左下のシーン送り・戻しボタンの操作で、分解写真のように再現することができます。
操作例:簡単にこの機能を試すには、[ファイル][開くLSS−S]で、ground1.scn(小さいデータ)、またはground2.scn(三陸海岸のステレオ空中写真の解析結果を、ファイルコンバータを用いてLSS−Gファイルにした地形の上に、横浜のランドマーク・タワーを建てたサンプルデータ)を用います。
後者を用いた場合の操作概要を示すと、まずランドマークをクリックして検討対象物として選択します(赤く縁取りされる)。このデータは複数の親子グループから成っているので、一部分だけが選択されます。そこで、[編集][他選択][親グループ]を実行して、タワー全体を選択します。
次に、[編集][視点設定]で、可視範囲解析を選択します。エリア指定ボタンを押し、補助画面の上で、解析したい範囲の左上と右下をドラッグにより選択します。解析開始ボタンを押すと、長考の末に解析結果が表示されます。細かい解析が必要であれば、解析精度の欄に、解析の単位となる碁盤目割の格子間隔をメートル単位で指定します。解析に要する時間は、精度の自乗に反比例します。
視点設定では、視点の高さ、仰角(0度で、真上から真下を見下ろす)等を指定し、設定画面の一点をクリックすると、その地点から対象物の方向を眺めたパースが主画面に表示される。視点の高さは、歩行者、自動車運転者、子ども等が選択できるが、この欄にメートルの数値を入力することにより、任意の高さから見た景観が眺められる。例えば100M等と指定すると、鳥瞰図が得られる。
移動経路指定では、経路指定のボタンを押し、経路上の点をクリックし、[次]ボタンを押す、という操作を繰り返して、経路を指定する。次に、ちょうどテープレコーダの再生ボタンのようなボタンを押すことにより、次々と視点が移動する。
(12)シャッター機能とシーン選択↓
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a.シャッター機能
視点設定等の機能、あるいは主画面の中の視点移動等により、景観検討にふさわしい視点や、代表的な地点からの景観画像が得られた場合には、この視点情報を「シャッター」ボタンにより記録しておくことができます。いわばカメラ・アングルの記録保存です。
既に記録されている視点位置を再現するためには、「表示」−「シーン選択」によりリストを表示し、この中から選択します。
多くの記録されている視点位置を次々と表示するためには、主画面左下のシーン名称表示ボックスの右にある矢印ボタンを押す(右で駒を進め、左で戻す)。
これは、プレゼンテーションを行う際に強力なツールになります。
b.シーン選択
あらかじめ登録してあるシーンを選択する機能です。LSS−S形式のファイルには、名称をつけて複数のシーン(無制限数)を登録することができます。シャッター機能により登録されるのもこのシーンです。シーンは、名前順にソートされて登録されています。シャッター機能により登録されるシーンは、視点位置を次々と変えるのみですが、この他に、同じモデルを用いながら、背景を変え、それぞれの背景に合わせた視点位置を設定したシーン系列、モデルを次々と変えるシーン系列、経年時間を変化させるシーン系列、光源条件を変えるシーン系列等を作ることができます。
これらの高度な設定を行ったシーンは、編集を行いながら、その都度シャッター機能を使うことで一応構成できます。 [編集][シーン][新規作成]や[削除]の機能も使用できます。但し、編集中の表示内容にまだ一貫性がありません。確かめるためには、一度ファイル保存して、再ロードする必要があります。従って景観シミュレータの編集機能だけではまだ効率的に作成することができません。使い慣れたユーザーであれば、メモ帳等のテキスト・エディタを用いて作成する方が捗るでしょう。数行を書き加えるだけで作成することができる。これらのデータ形式も全て公開されています。関心のある方は、メモ帳等で、LSS−Sファイルの中を見て下さい。
操作例:サンプル・データの、BRIDGE.SCNは、同じ背景・視点位置で、異なる形式の橋(モデル)を収録し、次々と比較するものです。
シーンを切り替えるためには、左下の、シーン名称が表示されたボックスの右の、左右の矢印をもつボタンを押すと、シーンを次々と進めたり、戻したりすることができます。これにより、あらかじめ用意したシーン系列を用いて、効率的に評価セッションを行うことができます。また、[表示][シーン選択]で、シーン一覧表を表示し、その中からシーンを選ぶことによって、一足飛びに別のシーンにジャンプすることもできます。
表示されている一つのシーンの中で、例えば視点位置の変更を行うこともでき、光源や経過年数等を変更することもできます。しかし、シャッターを使用せずに次のシーンに進めば、その情報はクリアされ、そのシーンを最初に表示したときの情景が保持されます。
(13)経年変化機能 ↓
前述しましたように景観シミュレータは時間変化機能を持っています。時間により変化する材料属性は、マテリアルファイルの中に記述されます。それぞれのマテリアルに、時間区分毎に属性を設定できるようになっています。この時間変化するマテリアルを表面、あるいはグループに対して定義しておくことにより、時間変化する情景を表示することができます。時間変化は、[表示][経年変化]で、建築後日数として数値で指定します。また、経年が異なるシーンをシーンリストとして登録しておいて、これを次々と表示することもできます。
操作例: [ファイル][開く LSS−S]で、KEINEN.SCNを開き、最初に登録されている橋を、経過年数を変えながら比較してみて下さい。
経年変化するマテリアルを、各部材の表面仕上げとして指定するためには、マテリアル・テクスチュアの編集画面を開き、マテリアルのラジオボタンを選んだ後、メニューの[登録色]で登録済みのマテリアル・ライブラリのリストを開き、使用するマテリアル・ライブラリを開き、その中から(経年変化する)マテリアルを選択します。操作そのものは、色やテクスチュアの指定と変わりません。
マテリアル・ライブラリは、所定のフォーマットに従って、テキスト・エディタで作成し、kdb\materialのディレクトリに格納した後、kdbms.setに登録するのですが、この作成はまだ上級者向けです。
(14)道路法面自動生成↓
この機能も、地形データが用意されていることが前提条件です。道路の断面形や、仕上げを指定するいくつかのパラメータを設定した後、道路中心線の軌跡、道路の高さ情報等を設定し、計算開始ボタンを押すと、かなり長い計算の後に、自動的に切土盛土された道路が現れます。当然ながら、このように自動編集された地形のデータは、元来複雑な元の地形よりも、更にかなりデータ量が増加します。
生成される道路、法面等について、マテリアル・テクスチュアを指定することができます。また、法面一段分の高さや、小段の幅、最大小段数等を切土面・盛土面のそれぞれについて細かく指定できるようになっています。
この機能で生成した道路についても、地面の属性を付けているので、後で走行シミュレーションを行うことができます(一度保存し、LSS−Sモードにする必要があります)。
操作例:ground.geo等を開いて、色々な組み合わせを試して下さい。まだ失敗することも多い機能です。地面をチェックして摺り付けないと、巨大な法面ができる場合があります。その場合、道路パラメータで、最大段数を大きくとっておく必要があります。
法面は景観上の課題です。これを作らないようにすると、橋やトンネルばかりのハイコスト道路になります。法面のパラメータを色々変えたり、仕上げにテクスチュアを用いる等の凝った処理にすると、時間がかかる上に無限の可能性があるので、かなりの時間はまる可能性があります。計算時間が長いので、別の仕事をやりながら、結果を待つのが良いでしょう。
なお、この機能は、簡単にダムを作ってみることにも使用できます。
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(15)CADデータの活用↓
大規模な構造物のデータを作成する場合には、景観シミュレータのモデリング機能だけでは困難であり、使い慣れたCADやモデラーを使用することとなるでしょう。その場合、景観シミュレータで活用するためには、ファイル・コンバータを使用する必要があります。
ファイル・コンバータは、「貿易」の中にまとめられています。これは、メイン・メニューの中で、入力ファイル形式、出力ファイル形式を選択し、詳細設定で、入出力ファイル名称、いくつかの変換条件等を設定し、変換実行することにより得られます。
DXF形式に関しては、現在まで、AUTOCAD、MALTSCAD、MICROSTATION等に対応しています。AUTOCADの場合、現在はRELEASE 13Jとして、ソリッド・モデルを出力するようになっていますが、この形式についたは、マニュアルにファイル仕様が明記されておらず、暗号化が行われているので、ファイル・コンバータではまだ対応していません。しかしながら、ソリッド形式で入力された立体のデータに関しては、ポリライン形式(RELEASE12)で出力したDXF形式を、コンバータの側で線分の接続関係を解析し、立体を復原するようになっています。
この他に、MACINTOSHで良く使用されているMINICADのテキスト形式、MICROSTATIONの形式(作成中)等をサポートしています。
これらのCADにより入力されたデータは、面の属性を有していないので、景観シミュレータの側で表面の仕上を付ける必要があります。
Machinami1.geoは、Autocadで入力した結果を、コンバータで変換したものです。
DXFの変換機能に関しては、この他に、Form-ZやMALZCAD等でも変換の実験を行いました。
(16)市街地自動生成
都市開発.exeという実行形式が、別途keikan\都市開発の下に格納されており、これにより地割データの上に、都市計画的条件設定を変えつつ、市街地を自動生成することができます。これは、景観シミュレータの将来の応用的拡張の一つのモデルとして、連携しつつ独立して動作する一つのシステムになっています。
ある地区で、このシミュレーションを行うためには、以下の作業を行います。
a.地割をディジタイザで入力
現在の所、ディジタイザの入力データ・フォーマットは、統一されていないので、受け口の部分をBASICで書いたconteur.basというソフトで入力し(現場にあるディジタイザの形式に、その場で合わせて修正することができる)、これを専用のdosベースのコンバータで地割記述ファイル(*.ldt)に変換し、このシステムの入力としています。
このシステムでは、メニューで、地割ファイル名、都市計画条件、敷地形状生成条件、建築類型、建築生成方法を指定した上で、簡易表示のために、日照方位、視点位置を指定し、再描画をメニューから選ぶと、生成結果を簡単にモニターすることができます。出力ファイル名を指定することにより、LSS−G形式のデータを生成します。これをsim.exeから開き、土木施設などを追加したり、編集することができます。
操作例:サンプル・データとして、あらかじめ作成してある 二本松.ldt 及び、函館.ldtのデータを使用して、市街地を自動的に生成する機能を試して見て下さい。
b.諸条件の設定
新規にインストールを行った場合には、条件設定を記述するファイルが無いので、シミュレーションを行う前に、まず全てのメニューを設定してOKして下さい。それでもうまくいかない場合には、[ヘルプ][インストール]実行して下さい。設定が成功すると、[再描画]でシミュレーションを実行します。
(1)[ファイル][背景イメージファイル指定]は、キャンセルで抜けて下さい。
(2)[ファイル][地割ファイル指定]で、敷地条件を記述したファイルを選択します。
(3)[ファイル][LSSファイル出力]で、出力するLSS−G形式のファイル名を指定します。以後、形状が変化するような条件を再設定して[再描画]を実行する度に、LSS-Gファイルが作成され、景観シミュレータで部品として使えるようになります。
(4)[都市計画条件]:容積率、高さ制限、斜線制限等を入力します。
[高度な設定]で、壁面線後退等を指定することができます。
(5)[生成方法][敷地生成]では、敷地をどのように表示するかを設定します。
(6)[生成方法][建築類型]では、自動生成される民家等の地域時代類型を設定します。
(7)[生成方法][更新機構]では、自動生成のメカニズムを設定します。通常は、「乱数で更地に建築を自動発生」を選択します。
(8)[太陽位置]では、緯度経度、月日、時刻を指定し、太陽方位を自動計算します。
(9)[視点位置]では、地区の中心から見た視点の方位・距離・仰角を設定します。
(10)[再描画]では、設定条件の変更に基づいて、再度シミュレーションを行い表示します。
(11)[終了]では、直ちに終了しますが、設定された条件は全て記憶しているので、次に立ち上げた時に同じ条件を再現します。
(12)[ヘルプ]では、ヴァージョン情報を表示するほか、環境が変化した場合に適応します。
最終的には、LSS−G形式のデータを生成し、景観シミュレータ本体の中で、更に道路を付加したり点景を加えたりするのですが、このサブシステムだけでも生成結果を簡易レンダリング表示する機能がありますので、どのような市街地が生成されているかを直ちに確認することができます(但し色彩は表示されない)。
(17)景観データベースの検索
景観データベースを検索するための3種類のブラウザが用意されています。これらは、景観シミュレータの配置機能等から利用することができるほか、単独で立ち上げて検索することもできます。入力用のエディタは別途用意されているので、ブラウザからデータを書き換えることはできません。
景観データベースは、建設省土木研究所が中心となって入力作業が進められつつあり、次の3のカテゴリーに分けられています。操作については、ごく一部を除き殆ど同じです。
a.優良景観事例
過去の建設事例から、モデル物件を、各分野について集めたものです。今後、各地での景観シミュレータの現場での運用実績に伴い、LSS−G形式の3次元データの蓄積が期待されます。喩えるならば、史料館のようなデータベースです。
検索は、全て累積的に行われます。例えば、AND検索(デフォルト)では、初期状態として全てのデータが選択されており、立ち上がった状態で何も条件設定せずに「検索開始」ボタンを押すと、全ての登録物件がアイコンとして表示されます。ある条件を付けて検索すると、その条件に合致するデータだけに絞り込まれます。次に別の条件を付けて検索すると、その絞り込まれた中から、更に新しい条件に合致するものだけが選出されます。最後は該当するものが無くなって終わりとなります。
「検索の履歴」ボタンを押すと、絞り込まれていった過程を振り返ることができます。
検索の結果選ばれた、条件に該当する要素は、ウィンドウの下半分に、小さなアイコンと名称(長い場合はその冒頭の数語)が表示されます。
その中から閲覧したい要素をマウス・クリックで選び、文字情報表示、画像情報表示(イメージ、3Dモデル)を行います。
条件の設定は、上部のメニューから種別・分野等を絞り込む方法と、ウィンドウの中程で名称・キーワード等で選ぶ方法があり、同時に併用することができます。上部のメニューから選ぶ場合は、最終的に選ばれた条件が検索条件となります。
名称で検索する場合は、名称のラジオボタンをチェックし、キーワード/名称記入欄に名称を入力します。設定のボタンを押すと、入力した名称がキーワードの欄に追加されます。入力した名称が、対象の名称の一部に含まれていれば該当したことになります。キーワードの欄に一度登録した名称またはキーワードを削除するためには、その行を選択して、「一行削除」のボタンを押します。
キーワードの場合には、キーワードのラジオボタンを選択します。次に、キーワードを含む項目を選択します。そして、「キーワード一覧」のボタンを押すと、その項目に登録されているキーワードが列挙されるので、その中から求めるキーワードを選び、「設定」ボタンを押すと、そのキーワードが右の一覧に追加されます。キーワードが多く設定されている項目は、「整備の背景、方針、目的、内容」及び「評価」等です。
以上で、検索条件が設定してから「検索開始」ボタンを押すと、検索が開始され、該当するデータが下に表示されます。
b.景観構成要素
ダムに浮かぶ舟や放置自転車や郵便ポストや草葺農家やガスタンク等の、景観を構成するアノニマスな点景です。喩えるならば、国語事典のようなデータベースです。
検索方法は、優良景観事例とほぼ同様です。種別や名称から検索するのが便利です。
c.景観材料
最近、各社から発売されている景観を指向した土木建築材料を集めたものです。構築にあたっては、各種材料メーカーの御協力を頂いています。暴露試験の結果を経年変化シミュレーションに活用します。古びて深みの増す材料もあります。これは、情報の新鮮さが求められる世界です。現在、ネットワークを通じて、メーカーからのデータの公開の仕組みについて検討がなされています。インターネットのように、1カ所に集約しなくとも最新情報を系統的に検索できる仕組みができると、理想なのですが。喩えるならば、求人広告のようなデータベースです。
景観材料だけは、キーワードの付け方が異なっています。このデータベースでは、キーワードという項目が独立して設けられ、あらかじめ定められたキーワード・リストの中からキーワードを選択するように定義されています。従って、項目を選択することなく、キーワードのラジオボタンを選択してから、直ちに「キーワード一覧」のボタンを押すと、キーワードの一覧が表示されます。その中から検索したいキーワードを選択し、「設定」ボタンで、キーワード一覧表にそのキーワードを付け加えます。
若干の補足説明:
・データ形式について
LSS−S、LSS−G形式については、建設省建築研究所刊行、「建築研究資料No.85 3次元CGによる土木建築施設のための景観検討システム−プロトタイプ版−」(1995.9)に概要を解説してあります。現在は、これから若干の拡張が行われています。
システムの構成に関心のある方、コンバータやデータ・ジェネレータを自作したいと考える上級ユーザは、この資料を参照される他、サンプル・データのLSS−G、LSS−Sをエディタ等で見て頂けば、概要は把握できると思います。フルセットは、テクスチュアや経年変化するマテリアル、パラメトリックな部品の記述まで可能な構成となっていますが、情報を省略した簡単な記述でも、絵は出ます。コンバータの作成はかなり容易だと思います。いくつかのコンバータを書いた私の経験では、例えば去る3月に旭川の古い煉瓦造建物の実測調査をしながら、その現場のフランス積みの煉瓦の割付方法(アルゴリスム)をC言語で記述し、3次元的な煉瓦壁のデータを作って、景観シミュレータで表示できるような短いソフトを2時間程で作成することができました。
・ネットワークでの情報公開について
現在は、建設省外からフリーウェアの要望があった場合、空のCD−Rを送って頂き、これに書き込んだものを返送する方法で配布しておりますが、この出版が行われる頃には、最新版を建設省建築研究所のホーム頁」(http://www.kenken.go.jp/)に開設されたアノニマスFTPでダウンロードできる体制ができているものと思います。この仕組みを通じて、データ形式や、ソースコードも公開していく所存です。また、建設省土木研究所(http://www.pwri.go.jp/)では、データベースの公開を行っていく計画を有しています。
5.トラブル・シューティング
景観シミュレータのデバッグは、鋭意進めておりますが、様々の機種やOSの組み合わせの上での試験は、まだまだ不十分と考えております。しかしながら、実務で使用できるためには、安定した確実な動作は非常に重要ですので、インターネット等を通じて寄せられた質問やバグの指摘には、可能な限り対応しつつあります。
その中で、多く寄せられる操作方法に起因する疑問等、及び既知の未解決のバグ等についてここで簡単に触れておきたいと思います。
(1)インストールに関わるトラブルと対処
・インストーラがうまく動作しない場合
・インストールが正常に終了しない場合
(2)インストールは終了したが、景観シミュレータが起動しない場合
・Windows95上でご使用の場合、景観シミュレータの初期画面が表示されない場合の多くは、OpenGL関連のdll(ダイナミック・リンク・ライブラリ)が起動できないことが原因です。古いヴァージョンのWindows95をご使用の場合、インストールの解説に基づいて、再度CD−ROMから、OpenGL32.dllおよびGLU32.dllの二つのファイルが、正しくインストールされているかを確認して下さい。この二つが正常に機能しないと、何も表示されずに終了してしまいます。また、まれに、WindowsNT用のこれらのライブラリ(95用とは異なる)とのコンフリクトが考えられます。デュアル・ブートでご使用の場合、95用のライブラリは、ksim\bin ではなく、95用のWindows\systemにインストールするようにして下さい。これらがsim.exe等と同じディレクトリにある場合、現在のOSとは関わりなく最優先でそれらを起動しに行くため、OSとは整合しない場合が生じることがあります。
(3)景観シミュレータの環境設定上の諸問題
・インストールが正常に終了すると、景観シミュレータはとりあえず起動するはずです。しかし、[ファイル][開く LSS−G]等の機能を用いようとした場合に、kdb\geometry ではなく、実行形式 sim.exe のあるディレクトリにデータを探しにいくような場合があります。その場合には、環境設定ファイルである kdbms.set が、景観シミュレータから正常に参照されていないことが考えられます。その事の原因は、二つありえます。即ち、
a.環境変数 KSIM_ENV が正しく設定されていない。
これは、MS-DOS のコンソールを開いて、SET(改行)というコマンドを打ち込むことで確認することができます。KSIM_ENVという環境変数が設定されていない(表示されない)か、あるいは誤って設定されている場合には、Windows95では、autoexec.bat をインストールの解説に従って正しく書き換える必要があります。設定が有効になるためには、コンピュータを再起動する必要があります。また、WindowsNTの場合には、コントロール・パネルのシステムの機能を用いて、確認・再設定することができます。
b.KSIM_ENV の初めの方にある、ホーム・ディレクトリを指示する
HOME_PATH=……;
の項が正しく設定されていない。 この場合、メモ帳等のテキスト・エディタで、kdbms.setを開き、景観シミュレータをインストールした先を記述する正しいディレクトリ名に修正する必要があります。
・印刷機能については、まだデバッグが進んでいません。御使用のカラー・プリンタ等で正常に印刷できない場合、当面、OSによって提供されている画面キャプチャ機能を用いて、ペイント・ブラシ等のソフトに画面をコピーして、それらの印刷機能を用いてハードコピーを印刷出力して下さい。
・イメージ・データの変換に関する問題。
・
(4)景観シミュレータの操作上の諸問題
・マテリアル・テクスチュアの編集で、対象物を選択してから編集画面に入ると、選択が解除されます。対象物の移動や消去においては、まず対象物を選んでから機能を指定するようになっているのに対して、一貫性を欠いており、改善が必要な機能と考えております。
・視点移動のボタンの刻みが荒すぎるために、望んだ視点に到達できない。これも、ステップを調整できるような改善が必要と考えております。
・LSS−Sを保存すると、画面が消去され、初期状態になる。対処が必要と考えています。当面、保存されたLSS−Sファイルを再度ロードして作業を続行して下さい。
(5)関連周辺機能に関して
・景観データベース検索に関して
・ファイル・コンバータに関して
・都市開発シミュレーションに関して
6.配布中のCD−ROMについて
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建設省建築研究所, BUILDING RESEARCH INSTITUTE