皆様、こんにちは。国土交通省住宅局住宅生産課課長補佐の村上です。よろしくお願いします。私からは、国のストック社会に向けた住まいづくりの取り組みについてご紹介したいと思います。
 最初は、現在行われている長期優良住宅の基準の見直し状況と支援措置についてお話しします。その後で、中古住宅流通やリフォームといった良質な住宅ストックを形成するための取り組みについてご説明したいと思います。

パブリックコメントを踏まえて共同住宅の認定基準を見直し中
 まず、長期優良住宅の基準については、国の新成長戦略の中で共同住宅に係る基準の見直しがうたわれていることを踏まえて現在見直しを行っています。
 具体的には、事業者等からヒアリングを行い、見直しの課題を整理しましたが、耐震性に関しては、柱・梁が大きくなることで商品性やコスト面に課題があり、維持管理・更新の容易性に関しては、階高が増すことや竪穴のパイプスペースの代替方法に課題があるとのことでした。その他にも、可変性の階高基準が高さ制限上厳しいことや、比較的小規模な住戸を混在させたときに住棟全戸での認定取得が困難であるといった指摘をいただいています。
 これらを踏まえ、基準改正・運用改善の方針を昨年11月にパブリックコメントしました。その内容は、耐震性に関しては限界耐力計算を使いやすくする方向で検討していくとか、維持管理に関しては一定の配慮がなされたものについて竪穴のパイプスペースでなくてもいいとか、面積に関しては将来の住戸規模拡大等の配慮がなされたものについて緩和するというような内容です。
 現在、パブリックコメントの結果等を踏まえて検討を進めており、年度内に告示の改正を行うことを目標にしています。ただ、詳細な内容に係る部分が多いので、それらは告示ではなく技術解説の方で書いて、実態に合った認定基準にしたいと考えており、なるべく速やかに施行するべく、告示案、技術解説等の内容を詰めている状況です。

既存住宅の認定基準は24年度以降に制度化
 長期優良住宅についてはもう1点、既存住宅の認定基準があります。
 法律上は「建築しようとする場合」に認定できるということで、当然、増築や改築の場合にも認定することは可能になっていますが、実態上は、現在は新築の認定基準なので、新築の認定だけが行われている状況です。
 良質な住宅ストックをつくって活用するという大きな方向性の中、既存住宅の認定についても法律制定時の附帯決議の中で既にうたわれているので、現在、既存住宅の認定基準についても検討を行っています。
 具体的には、既存住宅も住宅全体として長期優良住宅の認定を取るという形になるので、改修しない部分の状態をどう把握するかとか、全体としての長期使用構造等をどういう性能項目・手法で評価するかということについて、技術基準の整備に必要な技術的な知見を得るため、平成22年度から調査を実施しています。
 これを踏まえて、24年度以降に制度化していきたいと考えています。後ほど紹介させていただく「トータルプラン」の中でも、既存住宅についても増改築等を行う場合に長期優良住宅の認定ができるように、認定基準や評価手法を整備していくということを位置づけています。

「地域型住宅ブランド化事業」を創設
 続きまして、平成24年度の長期優良住宅への支援措置についてご説明します。
 一つ目が、「地域型住宅ブランド化事業」です。今年度は「木の家整備促進事業」として、長期優良住宅を建てたときに建設費の1割以内かつ100万円を限度に補助をしていますが、この事業を少し見直して実施します。
 何が変わるかというと、将来にわたって地域における木造住宅の生産体制を確立していくところに主眼を置いているので、地域材を活用すること、地域の気候風土に合った地域型住宅を共通ルールに基づいて供給すること、そのために地域の住宅に関連する事業者がグループをつくって連携して取り組むことという三つの要件を求めています。
 事業の仕組みとしては、これまでの事業と同じように、各グループで提案を作成して応募していただきます。それを外部の学識経験者からなる委員会で評価をして、採択するという流れで実施します。補助についてもこれまでと同じように、採択された事業の中で長期優良住宅を建てた場合に補助が受けられるという仕組みです。予算は、90億円の内数を予定しています。

 なお、長期優良住宅に対する税制の特例は、引き続き実施されます。

震災復興支援で住宅エコポイント再開
 さて、ここからは長期優良住宅とは別の、良質なストックの形成とその有効活用に向けたリフォーム等に対する支援措置を紹介したいと思います。
 その一つ目は、昨年11月から震災復興支援という形で再開された住宅エコポイントです。
 今回のエコポイントでは、エコ改修をするときに耐震改修をすることと、リフォーム瑕疵保険に加入することという二つが新しく加算ポイントとして認められています。耐震改修については15万ポイント上乗せされ、45万ポイントまで使える形になっています。なお、商品交換に関しては、震災復興支援ということなので、半分は被災地の特産品購入や被災地への義援金ということで復興支援に充てることが必要という点が、大きな変更点になっています。

民間住宅を活用して住宅セーフティネットを整備
 また、24年度予算には、「民間住宅活用型住宅セーフティネット整備事業」として予算額100億円が盛り込まれています。この事業は、平成22年度の補正予算で一度実施していたものを、改めて当初予算に位置づけるものです。
 これは、公営住宅は応募倍率が高い一方で、民間賃貸住宅は413万戸の空き家があり、空き家率18.3%ということなので、それらを活用して高齢者や子育て世帯などの居住の安定を支援しようとする事業です。具体的には、改修に必要な費用に対して補助率1/3、戸当たり限度額100万円の助成を行い、バリアフリー改修工事又は共用部分の改修、耐震改修、省エネ改修、バリアフリー改修のいずれかをやっていただきます。
 今後、具体の募集内容や応募方法については、国土交通省のホームページ等を通じてご案内いたします。

リフォーム関連の各種支援策も充実
 次は、耐震改修に関する補助制度ですが、こちらは大きな変更はなく、補助対象額の計算を簡素化しました、ぜひご活用ください。

 こんどはローンの関係です。住宅金融支援機構のリフォーム融資について、フラット35の基準に合わない住宅を購入して基準に合うように改修した場合、フラット35の融資を受けられるように、住宅融資保険を付保するという内容です。買うときに一旦民間のつなぎ融資が必要にはなりますが、それも住宅融資保険の対象になります。
 また、既存住宅に対する住宅瑕疵担保責任保険の内容を充実するため、例えば保証範囲の拡大など消費者ニーズに対応した保険商品の充実のために必要な検査技術の導入・実用化等に対して支援を行う事業を予算計上しています。
 それから、次は既存住宅流通・リフォーム推進事業です。住宅の売買とリフォームをあわせて行う時に、きちんと建物検査をしていただいて、保険に入るとともに住宅の履歴情報を整備するという要件を満たした場合に、リフォーム費用について補助率1/3、戸当たり上限額100万円の助成をします。リフォーム工事の内容は、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修など特に限定していません。具体の内容については、今後国土交通省のホームページでご案内する予定です。

木造住宅供給の担い手を支援
 そのほか、木造住宅施工能力向上・継承事業として、供給側・生産者側の体制整備を図るための助成制度も設けています。24年度については、今後の省エネ基準の適合義務化に向け、省エネに配慮した住宅を供給するための技術力向上を中心に支援していくということを考えています。

 また、税の関係では今回の税制大綱の中で、贈与税の非課税措置について、省エネ性能または耐震性能を満たす住宅については、一般の住宅よりも500万円高い非課税限度額が認められています。

中古住宅・リフォーム市場整備のためのトータルプランを立案
 最後に、トータルプランについてご説明します。昨日までパブリックコメントを行っておりまして、現在、最終の取りまとめに向けて案を詰めているところです。
 主なポイントとして、まず1番目は、消費者が安心して中古住宅流通・リフォームに取り組める市場環境の整備をしようということで、住宅性能等に関する情報提供、保険の充実、住宅履歴情報の提供、インスペクション制度等について、普及を図っていこうということです。
 2番目には、消費者の方々にリフォームに取り組んでいただくための中古住宅やリフォームのイメージアップや、例えば金融面では住宅購入とリフォームとを一本化したローンの拡大など、中古住宅市場とリフォームの活性化の環境整備をしていこうということです。
 そして3番目として、供給側の事業者の技術力の向上を支援し、消費者が安心して頼めるような事業者の育成を図るということがあります。また、大規模なリフォームは中古住宅の流通段階で行うのがやり易いので、流通を担う宅建業者とリフォームを担う中小の建設業者にタッグを組んでもらい、流通のタイミングで適切なリフォームの提案をしていただくという取り組みを促進していこうという内容になっています。
 以上が、国としての24年度の取り組み、予算の内容等です。どうもありがとうございました。(拍手)

 

  ※当日の配布資料はこちらでダウンロードできます。   

 

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