■建築研究資料

人工大地型集合住宅開発指針

人工大地構法研究委員会

建築研究資料  No.19,  1977,  建設省建築研究所


<序>

  「人工大地構法」の研究は、昭和50年度から3ヶ年計画で第4研究部の一般研究として開始されたものである。開始にあたっての目的効果として次のことが当所の昭和50年度調査試験研究課題に述べてある。
  「最近、公共量産住宅の建設方式に対して、さまざまな観点からの問題提起がなされている。たとえば、現存の公共量産住宅の構法では、住宅に対する要求の多様化あるいは時間的な変化に適応できないために、建設投資が必ずしも将来の社会資本の有効な蓄積につながらないこと、ならびに、従来の建設方式は必ずしも都市全体の住環境の改善につながらないことが指摘される。本研究は、公共量産集合住宅の供給方式の一つの理想的形態として、人工大地構法を提示し、その現実のための技術開発を行う。本研究の具体化により、都市の住宅環境の改善に資する。」
  この研究は突然に出てきたものではなく、永年にわたって実施されてきた公共量産住宅に関連する多くの研究の中で取り残されたものとして、また今までの研究成果を総合化する方法の一つとして選定したものである。この経緯については、「集合住宅計画の問題点と今後の方向(人工大地型集合住宅の可能性)」建築研究資料No.10(1975.5)の序において述べたので、ここでは省略する。その後、昭和50年11月に当所主催の秋季講演会の一環として「人工大地構想による集合住居計画の展望」をパネルディスカッションのテーマにとり上げ、斯界の講師を交えて活発な討議が行われ、参加者の好評を博した。
  研究の進め方として、考え方を明らかにし、問題点を検討するために試案の作製があるが、この研究においても「人工大地集合住宅の試案」建築研究資料No.13(1976.7)を含めていくつかのものがある。試案の中には静岡県が計画している多目的遊水池の利用に関連するのもあり、このプロジェクトは最近になって具体化の方向に進んでいる。今後も国や自治体の具体的計画に参加することによって貴重な研究資料を得ることができるであろう。
  昭和51年度からは各専門分野の研究者の参加を得て、当所内に「人工大地構法研究委員会」を設け人工大地構想開発に伴う諸問題を総合的に検討し、「人工大地型集合住宅開発指針」を作成することになった。本報告書はこの委員会の昭和51年度の成果である。「人工大地構法」の研究を一般研究から特別研究へ変更することが昭和52年度に検討されたが実現しなかったので、一般研究として更に2ヶ年延長して54年度まで実施することになった。しかし、この3年間に実施した研究は人工大地構法の一端を覗いたにすぎないけれども、本格的研究の端緒を開いたと評価してよいだろう。

  昭和52年10月


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