■建築研究資料

都市交通調査 (パーソントリップ調査) の簡略化に関する調査・研究

黒川  洸   浅野  光行

建築研究資料  No.27,  1981,  建設省建築研究所


<概要>

  都市交通計画においては,将来交通需要をできるかぎり正確に予測することが重要なポイントである。しかし,現在実施されている都市交通調査,特にパーソントリップ調査において顕著なように,交通需要予測作業は計画立案プロセスの中でも多大の時間・費用・人手を必要とする。一方,都市交通に対する社会的ニーズは年々多様化してきており,多くの計画案の比較検討を迅速かつ低廉に実施することが重要な課題となっている。
  本調査は,このような背景のもとに,計画レベルと斉合した交通需要予測の簡略化を行うための基礎的資料を得るため,現在までに開発されている交通需要予測手段の簡略化手法を整理するとともに,その1つの方法として分析ゾーンおよびそれに対応した交通ネットワークの統合,および非集計モデルとしての交通機関選択モデルを対象として分析を行ったものである。
  交通量予測の簡略化を考えるに当り,まず,第2章において,簡略化の意味,目的を明らかにしつつ,簡略化手法を実査から予測に至るまでの段階において,資料収集,変数,データ,モデル構造の4種類に大別し,これらの内容について概観した。また,簡略化手法は,特定の課題があってはじめて意味のあるものになるので,計画課題を広く整理しつつ,計画課題と簡略化の対応関係について検討している。また,今まで行われてきた簡略化手法の事例についてのレビューを行った。
  第3章は,簡略化手法の実験例として,ネットワークとゾーンの統合による簡略化の実験計算を行ったが,内容としては,分析のための前提条件とその結果および簡略化の方向性についてとりまとめている。
  分析結果からゾーンとネットワークの簡略化の方向として以下に示す事項等が明らかにされた。

  (1)  ゾーン統合は平均トリップ長に与える影響は大きいが,混雑率,台キロ,台時等
   に与える影響は僅少であり,ある程度のゾーン統合は全体的にみてその影響は
   少ない。
  (2)  ネットワーク統合は平均トリップ長と台キロに与える影響は少ないが,他の項目
    に与える影響は大きく,結果の指標を何でみるかによってはネットワーク統合は
    十分な配慮を必要とする。

  第4章も簡略化手法の実験例として,ロジスティック曲線による非集計モデルについて分析した。
 内容としては,非集計モデル(ロジット型)の概要と経済学的および統計学的な意味づけを行うとともに,実際のデータをあてはめることにより,その分析結果をとりまとめた。
  以上の分析を通じ,全体的には交通需要予測の簡略化は予測プロセスの各段階において様々の手法が考えられるが,その適用は常に計画の目的,検討内容および必要とされる予測精度との関連でなされるべきであり,予測作業の効率化という視点で考える必要があることが明らかとなった。


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