■建築研究報告

医療機器の耐震性に関する振動台実験

水野二十一, 飯場正紀, 山口修由, 岡野 創

建築研究報告  No.108  January  1986  建設省建築研究所


<概要>

  大地震時において医療機能・病院機能を確保するため,医療機器に耐震性が求められる。実際,1978年宮城県沖地震などにおいて,保育器の移動,停電による人工透析器の停止などが報告されている。本実験は医療機器の地震時挙動と耐震性を明らかにするため,代表的な医療機器の実物・模型の振動台加振実験を行うものである。
  東北大学建設系建物を病院とみたて,入力地震動に1978年宮城県沖地震東北大学建設系建物の1階・9階の強震記録(NS)を採用し,可能な限り波形を忠実に再現する方針とした。しかし,9階の記録については振動台の性能上時に再現することが不可能である。そのため,試験体は,実物と模型(長さの相似比1/2.7,1/3の2種)を用いた。このような方針を採ったのは,想定を重ねるよりは実証性に力点を置くのが良いと考えたからである。すなわち,東北大学では宮城県沖地震の際,多くの家具が転倒しており,本実験結果との比較対照が可能となる。試験体として用いた医療機器は,1)未熟児用保育器,2)NICU用未熟児用保育器,3)新生児用ベット(コット),4)成人用ベット,5)ICU用成人用ベット,6)床頭台・オーバーベットテーブル,7)車イス,8)その他,である。キャスターのあるものについては,その条件を変えて実験を行った。床は,振動台上に合板(厚24o)を張り,長尺塩ビ仕上げの1種とした。ベット類・車イスについては,実際の使用状態を模疑するため,乳児人形・人間を採用した。

  得られた主な結論は,次のとおりである。

  1. 実物と模型の結果(9階の記録)を比較すると,本実験で採用した模型化の方法は妥当である。
  2. 実験を行った中では,保育器類が最も耐震的に不利である。特にNICU用保育器で各種医療用計測器を載せるスタンドを,後ろにスライドした状態(乳児を加療診断する時)が最も不利である。
  3. 保育器のキャスターをフリーにした場合は,転倒に対して有利となるが,移動量がかなり大きくなる。
  4. 保育器は通常4個のキャスターのうち2個をロックする。全面ロックよりも対角ロックの方が,転倒に対して有利となる。保育器自体の鉛直軸まわりの回転でエネルギーを吸収するためと考えられる。看護婦の日常の操作の上からは前面ロックの方が使いやすいが,今後対角ロックを推奨すべきであろう。
  5. 宮城県沖地震の東北大学建設系建物を大地震時の病院建物と想定すると,キャスター条件と設置階によっては保育器類に転倒を生ずる。


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