■建築研究報告

都市の性格と用途地域面積比率について

入沢  恒

建築研究報告  No.12,  昭和29年2月


<概要>

  用途地域は都市の建物用途の現況、あるいは土地利用の状況と建物その他の適地條件、都市の構成形態とから設定されるものであるが、土地利用や適地はある適度その都市の性格、機能または地形、形態などによって支配されるもので、各用途地域の面積もまたこれらの影響をうけて配分される。
  各地域の選定があやまられ、その面積の配分が都市の地形や機能とかけはなれておこなわれるばあいには、都市の能率、運営のうえに不合理をもたらし、健全な発達をさまたげることになる。このために各用途地域の面積配分は形態上のみならず、都市の現在および将来の機能に適した均衡のとれたものであることが必要である。
  現行の用途地域は、その類別が大きく規定内容にかなりの幅があり、また市街地のある部分には異質の建築物が混在していて、どの種の地域をかければもっとも適当であるかむずかしいばあいがあり、未建築地では適地條件のみによって地域をかけると、その面積が必要以上に大きくなったり不足したりすることがおこる。とくに既存市街地では現状にとらわれすぎて制限の緩い方向にむかい、商業地域、工業地域が大きくとられ、住居地域は都市周辺部の未建築地に指定される傾向があって、地域図のみをみるとき、その構成形態はととのっていても、実際には地域制の効果をあらわしえないことになる。
  このようなことにたいして、各用途地域の配分を適正にし、またそれを修正するためには、それぞれの都市の機能などにたいして均衡のとれた地域配分がおこなわれるよう、各用途地域面積の比率について適当な基準となるべき尺度が必要と考えられる。
  本文では、この住居地域、商業地域、準工業地域、工業地域の面積比率に一般的な尺度をあたえるため、都市の機能によって都市を分類し、これにもとづいてまず現行用途地域の面積比率とその機能との関係の分析をこころみるものである。
  利用した統計資料の主なるものは、都市機能分類にやや適当でないと思われるが昭和22年度の国勢調査の結果と建設省都市局調べの現行用途地域指定一覧表とである。
  なお対象都市は、昭和25年5月1日現在の市制施行都市243市(一関を除く)のうち、用途地域制の施行されている143市(武蔵野市を除く)である。

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