■建築研究報告

炭素繊維を中心とする新素材繊維強化セメント・コンクリート系複合材料の
力学的特性の評価に関する研究

白山和久, 福島敏夫他

建築研究報告  No.131  August,  1991  建設省建築研究所


<概要>

  本報告は、新素材・新材料の建築材料としての有効利用を図るための性能評価に関する研究の一環として、PAN系の高強度・高弾性・高耐食性の炭素繊維を利用した短繊維補強コンクリート及び長繊維補強コンクリートの力学的特性に関して、(社)建築研究振興協会内に設置された「繊維強化セメント系複合材料活用研究委員会」を通じて行った研究成果を基にして、取りまとめたものである。
  短繊維補強コンクリート(短繊維FRC)は、石綿の使用が環境に及ぼす悪影響の面から困難になっていることや鉄筋工の不足などの条件もあり、非構造部材や二次構造部材としての活用が益々増加することが予想されることを踏まえ、試験方法及び評価方法の標準化を図るために、PAN及びピッチ系炭素短繊維、アラミド短繊維、耐アルカリガラス短繊維で補強した短繊維FRCをプレミックス法で同一マトリックス条件で製造し、引張、圧縮、曲げ特性の比較を行った。その結果、高強度・高弾性を必要とする部材にはPAN系CFRCが、高靭性を必要とする部材にはAFRCが適しており、ピッチ系CFRC及びGFRCはその中間の一般的な力学的特性を有することが明らかになった。
  長繊維補強コンクリートでは、エポキシン樹脂で固めたPAN系炭素長繊維異形補強筋(CF筋)及びそれで補強されたコンクリート部材(長繊維補FRC)についての力学的実験による基礎的研究を行った。CF筋はコンクリートとの付着強度については十分実用化が期待できるが、引張特性は完全弾性を示すと同時に破継伸度が小さく、構造材料としての使用には、十分な検討が必要であるが、補強コンクリートの曲げ及びせん断実験では、既住のRCの終局耐力の計算値と実験値とが良く一致を示し、補強筋としての十分な使用が可能であることが明らかとなった。
  本研究報告は、新素材繊維を利用したセメント・コンクリート系複合材料の力学的特性の定量的評価法の一つの方向性を示すものである。合理的な設計法の開発を持ってこの様な新素材繊維強化セメント・コンクリート系複合材料の利用が進展してゆくことが期待される。


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