■建築研究報告

市街地の延焼危険性評価手法の開発

岩見達哉*1,大宮喜文*2,林吉彦*3,成瀬友宏*4,竹谷修一*5,鍵屋浩司*6,
糸井川栄一*7,加藤孝明*8,志田弘二*9,北後明彦*10,高橋済*11

建築研究報告 No.145 平18年2月  独立行政法人建築研究所


<概要>

 平成7年に発生した兵庫県南部地震では、市街地火災が広幅員の道路、公園、連続不燃建築物などの都市基盤により焼け止まり、延焼遮断帯の重要性が確認された。その一方で、街区内部は火災による被害が著しく、市街地火災に対する地区レベルでの安全性向上の重要性が、あらためて指摘された。このような災害に対しては、行政のみならず、平常時から住民が参加したまちづくりや対策を支援するための技術開発が不可欠となっている。

 そこで本研究は、市街地特に木造密集市街地等において平常時及び地震後も含めた防火性能を地区レベル(10〜30ha)で評価する手法を開発することを目的として行った。

 まず、都市の中でどの地区が危険なのかを把握するために、延焼危険性に関する評価手法を開発した。これは、他の建物へ加害性を与える空間として建物の延焼限界距離の半分の範囲の面積と、大規模な空地を除いた地区面積との割合であるセミグロスCVF値を用いて町丁目の防火性能を評価する手法である。セミグロスCVF値は建物形状や防火上の構造等からGIS上で計測するものであるが、GISデータが整備されていない場合を想定し、町丁目ごとの集計データから導くことが可能な推測式を提案した。

 次に、防災上危険性が高いと評価された地区において、地区の詳細な防災性能を評価するための評価技術として、火災の燃え広がり方を評価する延焼シミュレーションを開発した。この延焼シミュレーションが従来のものと異なる点として、@火災実験に基づいて物理的なモデルを構築していること、A建物の開口部(窓など)の大きさや位置による影響も評価が可能であること、B火炎合流の影響も考慮していること、等があげられる。シミュレーションを行った場合、建物ごとに出火から何分後に着火するか、出火からの経過時刻ごとにどの建物が延焼しているのかを把握することが出来るほか、出火建物を複数とることによって地区の焼失率を導くことも可能である。さらに、このシミュレーションにより、現状における危険個所、改善ポイント等を把握することも可能となる。

*1 国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部都市計画研究室主任研究官
   (独立行政法人建築研究所住宅・都市研究グループ研究員(〜H14.8))
*2 東京理科大学理工学部建築学科助教授
   (独立行政法人建築研究所防火研究グループ主任研究員(〜H15.3))
*3 独立行政法人建築研究所防火研究グループ上席研究員
*4 独立行政法人建築研究所防火研究グループ上席研究員
*5 国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部都市防災研究室主任研究官
*6 国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部都市開発研究室主任研究官
*7 筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工学専攻教授
   (国土交通省建築研究所第6研究部都市防災情報研究室室長(〜H13.1))
*8 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助手
*9 名古屋市立大学芸術工学部都市環境デザイン学科助教授
*10 神戸大学都市安全研究センター助教授*11 アイエヌジー(株)取締役


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