■建築研究報告

中空二重壁の音響透過損失に関する研究

田中  洪

建築研究報告  No.84,  1978  建設省建築研究所


<概要>

  昭和45年に建築基準法に、長屋・共同住宅の界壁の遮音性能の条項がとり入れられて以来、壁体による遮音という事が盛んに考えられるようになって来た。また、それに伴って部材を種々に組み合わせて遮音効果を増すというような事も行われて世の中に遮音壁と名を付けて、テレビのCMにも出現する様になった。しかし、遮音(ここでは壁体による空気音の透過損失の意味)の理論的な考察というのは、多くの研究者が、それぞれの面から手がけているが、現実に開発されて用いられている壁体(多くは複合部材による壁体である。)のうち、振動一体系の一重壁を除けば、そのかなりの種類の壁体の遮音機構は解明されてはいないと云える。
  中空構造の壁体は、一般に中高音域において、同じ質量の一重壁よりも大きな透過損失値を示す事より、軽量で比較的性能のよい壁体として多く用いられるようになって来た。また、中空部に断熱性を増したり、剛性を増したりする目的で種々の材料を挿入されている複合壁も多い。
  中空壁の透過損失の理論解析は、A.Londonによって始められたが、拡散入射条件における透過損失の計算値は実際の測定値と著しく異なり、同じ面密度の一重壁と比較して理論値は不利な値を示す。
  本報告は、その複合部材による壁体の解析の基本となる二重中空壁について、垂直入射条件下の解析を、まず無限の広さを持つ壁体としてA.Londonの手法を一般化して行い、更に、有限な広さの矩形板とした場合について、主に波動論的な取扱いをして解析したものである。
  有限の矩形板として波動論的に取扱って解析した初めてのものである。



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