■建築研究報告

建設省総合技術開発プロジェクト  
住宅性能総合評価システムの開発研究報告書

建築研究報告  No.87,  1979  建設省建築研究所


<概要>

  「住宅性能総合評価システムの開発」は、建設省総合技術開発プロジェクトの一環として、昭和48年度から5ヶ年計画で発足したもので、建築研究所を中心として研究開発が進められて参りましたが、53年3月多くの方々の御尽力、御協力のお陰により成功裡に終了いたしました。
  わが国においては、都市への人口集中や世帯の細分化に伴い、住宅に対する需要はなお強いものがあり、現在も年間150万戸もの住宅が建設されております。一方では、近年国民の生活水準の向上とともに、住宅問題も「量の確保」から「質の確保」に比重が移行してきた傾向があり、住宅の性能など質についての関心がとみに高まって参りました。
  このような情勢のもとで安くて質の良い住宅を大量に供給し、ユーザーがこれを合理的に選択し、取得できるようにするためには、住宅生産の工業化を推進する一方、居住する立場からの要求に基づいた合理的な住宅の設計目標や評価方法を明確に提示していくことが重要な条件となります。
  建設省が、昭和48年に工業化住宅の安全性、居住性、耐久性の諸性能について建設大臣が認定し、それらを公表してユーザーの住宅選定の便に供する「工業化住宅性能認定制度」を発足させ、また同時にユーザーにとって理解しやすく、かつ、総合的に住宅を評価する方法を根本的に検討し、そのための基礎的な技術を開発するための本総合プロジェクト「住宅性能総合評価システムの開発」に着手したのもこのような社会の要求に応えようとしたからであります。
  本総プロの開発対象は住宅性能の総合評価方法です。しかしながら、個々のユーザーがそれぞれに個有の条件にもとづいて建てる住宅の性能を総合評価する場合において、行政や研究などの立場とユーザーの立場とは自ら異なっております。本総プロでは、基本的にはユーザーによる評価を手助けするシステムを開発するという立場をとりました。すなわち、この第1の成果である「住宅性能情報提供システム」は、住宅評価にとって必要となるデータと評価の考え方並びに方法をユーザーに提供することの提案であり、第2の成果「住宅の性能評定・表示システム」は、住宅性能に関する有効かつ公正なデータを提供する機能の具体的提案です。そして、第3の成果の「ユーザーのための住宅選定用マニュアル」は、それら提供された性能等のデータをもとにユーザーが評価をするときの手助けをしようとするものであります。
  これらの成果は、このための基礎技術として本総プロの中で開発された各種性能の測定法、評価法並びに評価基準等も含め、昭和30年代初期以来の建築性能あるいはその評価に関する研究の20年近い蓄積を土台として行われたわけですが、一般の住宅というものを対象として、かくも多くの内容と研究者、技術者とを結集した総合的テーマとして行われたことと、その開発内容が生産者サイドよりは、むしろ一般のユーザーのための評価方法の開発を志向してきたということにおいて、非常に画期的であり、また、有意義な研究であったと自負いたしております。
  得られました成果については今後、行政、設計あるいは研究などいろいろな場において使われることと思いますが、建築研究所といたしましても関係各方面とともに検討を加え、成果を有効に社会に還元するために努力をつづけたいと考えます。
  最後に、御協力頂いた日本建築センター、国土開発技術研究センター及び両センターに設けられた委員会委員のかたがた、プレハブ建築協会及びその会員各社、その他関係各位に厚くお礼申し上げます。



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