■建築研究資料

No.204号(2021(令和3年) 10月)

「熊本地震で被災した鉄筋コンクリート造建築物を対象とした地震後継続使用確保に資する検討」


向井智久,渡邊秀和,坂下雅信,鹿嶋俊英
塩原等,衣笠秀行,谷昌典,毎田悠承,迫田丈志,金子治,田沼毅彦,成田修英

国立研究開発法人建築研究所


    
<概要>
 本資料は,2016 年に発生した熊本地震により大きな被害を受けた鉄筋コンクリート造建築物を対象として,地震後の継続使用性に関する検討を纏めたもので,建築研究所の指定課題「既存建築物の地震後継続使用のための耐震性評価技術の開発(H28-30)」で実施した。
 2 章では,大きな震度が確認された庁舎建築物の建物管理者に対して,ヒアリングを実施し,地震後継続使用性の判断内容の把握を目的とした調査結果を纏めている。
 3 章では 1981 年以降に建設された 5 階建て鉄筋コンクリート造庁舎で,柱梁接合部の破壊により大破と判定した建築物に対して,建物管理者から提供を受けた設計図書や地震被害直後の写真情報を元に骨組解析モデルを用いて柱梁接合部の損傷性状評価に関する詳細分析を行っている。
 4 章では 1981 年以降に建設された 10 階建て鉄筋コンクリート造共同住宅で,下階壁抜けとなっている構面が多い,いわゆるピロティ形式であり,1 層の柱のせん断破壊や 2 階梁端部の局所的な破壊等により大破と判定した建築物に対して,建物所有者との密接な連携により,解体時に現地調査を実施し,建物の詳細な調査に加え,現地において材料の抜き取り調査を行い,その結果を用いて有限要素解析による 2 階梁等が架構全体に与える影響に関する詳細分析を行っている。
 5 章では 1981 年以降に建設された 4 階建て鉄筋コンクリート造共同住宅で,各住戸間がスラブで接続されている特異なピロティ形式で,1 層の柱端部が大きく破壊したために大破と判定した建築物に対して,建物管理者から提供を受けた設計図書情報を元に骨組解析による被害要因に関する詳細分析を行っている。なお,本建築物は大破と判定されたものの,その後補修補強工事によって 2019 年 3 月に再利用が可能な状態である。
 6 章では 1981 年以前に建設された 2 棟の 10 階建て鉄骨鉄筋コンクリート造共同住宅で,いずれも低層階の玄関周りの非耐力壁が大きく破壊した建築物に対して,建物管理者から提供を受けた設計図書や現地にて実施した微動計測,修復工事に関する情報に基づき,損傷状態並びに修復に要した期間を推定できる骨組解析モデルを用いた分析を行っている。
 7 章では 1981 年以前に建設され,その後耐震補強された 3 階建て鉄筋コンクリート造庁舎で,今回の地震で震度 7 を二度経験しており,杭部材の損傷により上部構造物が傾斜した建築物に対して,建物管理者から提供を受けた設計図書や現地にて実施した各種調査(特に杭基礎掘削調査,3 次元レーザースキャナーや高解像度写真等の調査)による情報に基づき,その被害状況把握と被害要因に関する詳細分析(地盤を考慮した動的解析による検証など)を行っている。
 8 章では 1981 年以前に建設され,その後耐震補強された 3 階建て鉄筋コンクリート造庁舎で,短スパン梁や耐震壁並びに大きな居室の天井材や最上階の設備機器が損傷した建築物に対して,建物管理者から提供を受けた設計図書や現地にて実施したドローンによる高解像度写真撮影を行った調査による情報を元に耐震補強部材を考慮した被災度判定や部材の損傷度評価に関する分析を行っている。
 9 章では 1981 年以前に建設された 5 階建て鉄筋コンクリート造庁舎で,柱梁接合部の破壊による局部崩壊した建築物に対して,建物管理者との密接な連携により,解体時に現地調査を実施し,建物の詳細調査に加え,現地において材料の抜き取り調査を行い,その結果に基づく骨組解析モデルを用いて柱梁接合部の損傷性状評価に関する詳細分析を行っている。


表紙・はしがき・概要・目次      257KB
第1章 はじめに 496KB
第2章 継続使用性に関するヒアリング調査 452KB
第3章 建築物Aに関する調査分析 1,428KB
第4章 建築物Bに関する調査分析 680KB
第5章 建築物Cに関する調査分析 2,071KB
第6章 建築物Dに関する調査分析 9,006KB
第7章 建築物Eに関する調査分析 19,973KB
第8章 建築物Fに関する調査分析 2,501KB
第9章 建築物Gに関する調査分析 3,081KB
第10章 結論 220KB
奥付 136KB
全文 37,252KB


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