■国際協力 |
建築研究所における国際協力活動の歴史は古く、国際地震工学部では1962年以来30数年の間に開発途上国から地震学・地震工学分野
の研修生を83ヶ国
1,101名受け入れている。また、1962年のイラン地震から1999年のトルコ、台湾地震に至るまで、20数回にわたって地震被害に関する調査並びに
技術協力が実施されてきている。 |
国際研究機関関連 |
建築研究所が定期的に参加して活動を行っている国際会議のCIB、RILEM、ISO、FORUMにつ
いて、以下にその概略を示す。
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1. CIB(国際建築研究情報会議)
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建築の研究、調査、応用及びそれらの情報に関する国際協力を奨励促進することを目的として1953年に
設立された。2000年現在の会員数は、約70ヶ
国500機関(日本の会員数は24機関)である。当初の設立目的は第二次世界大戦後のヨーロッパ諸国の復興にあったため、会員構成はヨーロッパが半数以上
を占めている。しかし、数年前からCIBが建築界の国際連合のような役割を果たしていこうという動きが活発化しており、従来以上に幅広い活動を行おうとし
ている現状にある。建築研究所は日本代表を務めており、毎年開催される理事会及び総会へ出席している。 また、建築研究所職員も種々の作業部会等に参加し、CIBの活動に貢献している。
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2. RILEM(国際材料構造試験研究機関連合)
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第二次世界大戦により中断されていた建築材料・構造分野の研究交流を目的として1947年に設立され
た。現在はCIBと並ぶ世界的な活動を行っている。
2000年現在の加盟国約70ヶ国、会員数約900名(日本の会員は個人会員47名、賛助会員8団体、企業会員1団体、特別会員2団体)である。建築研究
所は日本の代表委員として毎年開かれる総会へ出席している。 また、建築研究所職員も種々の技術委員会に参加してRILEMの活動に貢献している。
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3. ISO(国際標準化機構)
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物質及びサービスの国際交換を容易にし、知的、科学的及び経済的活動分野における国際間の協力を助長す
るために世界的な標準化及びその関連活動の発展・
開発を図ることを目的に、1928年に組織された万国規格統一協会(ISA)の事業を引き継ぎ、1947年に設立された非政府間機関であり、電気関係を除
くあらゆる分野の規格を制定している。 建築研究所職員もTC92(火災安全)、TC98(建築物の設計の基本)等の技術部会に参加している。
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4. FORUM(火災研究国際共同フォーラム)
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FORUMは、1988年に発足した火災研究を主として実施している各国研究機関による国際研究推進組
織であり、火災研究を推進している世界の主な研究
機関の一つとして建築研究所も参加している。 市場・貿易競争の地球規模化、国際基準標準化の傾向の中で、発足以来、毎年各研究機関の火災研究責任者が集まり、国際共同による火災研究の推進方策を打 ち出してきた。建築研究所も、火災研究を推進している主要な研究機関として毎回参加してきた。1995年度には当建築研究所がホストとなって、つくば市に おいて開催された。
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5. その他の国際会議、調査等
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上記以外の海外の国際会議へも多数の建築研究所職員が参加しており、研究交流促進法第5条を含めると平
成2年度〜平成11年度の10年間に延べ
1,089人が842件の国際会議等へ出席した。
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年度 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
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件数 | 76 | 72 | 66 | 75 | 90 | 92 | 107 | 84 | 85 | 93 |
人数 | 94 | 84 | 85 | 87 | 107 | 113 | 152 | 94 | 124 | 149 |
先進国との共同研究 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
1. UJNR耐風耐震専門部会
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UJNR(天然資源の開発利用に関する日米会議)の専門部会として1969年に第1回合同部会が東京で 開催され、以後、毎年日米交互に開かれている。同部会の目的は、両国で行われてきた構造物の耐風耐震設計法の開発研究の結果に関する意見交換、設計基準改 正上の問題点に関して実施された調査研究の成果交換、強風、強震、津波と高潮により生じる災害から人命及び財産の損失を防止するための総合的対策、技術分 野の開拓などである。建築研究所からは毎年10編程度の論文が提出されており、多数の建築研究所職員が会議へ出席している。また、合同部会の下で個別テー マ毎に10の作業部会が活動を行っている。研究例を以下に示す。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
<日米共同大型耐震実験研究> (1979年〜) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
本研究は、UJNR耐風・耐震専門部会の傘下で実施されている各種構造物の耐震安全性に関する一連の共
同研究である。これらの共同研究を通じて以下の成
果が期待されている。 ・より高い安全性を確保するための設計法の確立 ・より高い経済性を確保するための設計法の確立 ・より高い精度を有する耐震安全性評価手法の確立 ・建築物の地震挙動をより忠実に再現するための実験手法の確立 ・海外建設に伴う国際競争力の強化 ・真の情報人事交流の確立 本共同研究は、構造種別毎に2〜3年間の研究期間で、以下の年次計画に従って実施されている。 ・1977〜1979年 計画作業部会 ・1979〜1981年 鉄筋コンクリート造研究 ・1981〜1984年 鉄骨造研究 ・1984〜1989年 組積造研究 ・1989〜1993年 プレキャスト造研究 ・1993〜1998年 ハイブリッド構造研究 ・1998〜2003年 高知能建築構造システム |
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![]() 日米共同大型耐震実験研究(ハイブリッド構造)会議 |
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2. UJNR防火専門部会
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UJNRの専門部会として1976年にワシントンで第1回合同部会が開かれ、おおむね1年半毎に日米交 互に開催されている。部会の目的は、建築火災及び 建築と材料等の燃焼による人的、物的被害を防止し、ひいては公共の福祉増進に資することにある。日本側部会長は建築研究所長であり、建築研究所職員が積極 的に参加し活動を進めている専門部会の一つである。1998年5月には建築研究所及び消防研究所において部会が開催された。また、2000年3月にサンア ントニオで開催された第15回部会において、今後は少人数の専門家によるワークショップを開催することとした。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
<日米共同防火実験研究> | |||||||||||||||||||||||||||||||||
現在の研究内容は、「市街地における火災拡大機構のモデル化」に関する研究であり、市街地における飛び 火や火炎合流といった特異な現象について、実験を中心として定量的解明を行い、火災拡大機構を探り、そのモデル化を図って行くものである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
3. 日仏科学技術協力協定
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本協定の元で以下の研究を実施している。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
<日仏共同材料・部材開発研究> (1995年〜) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
鉄筋コンクリート部材の耐久性向上を目的としたプロジェクトの一つである“建築材料の微小構造と劣化”
を行っている。具体的には、劣化現象を材料の微小構造、特に細孔構造とそれに規定される物質移動現象との関係で分析し、耐久性向上のための基礎資料を得る
ものである。 この研究をはじめるに当たって、1995年1月にはフランスCSTBにおいて「建築部材の熱水分特性評価」に関する国際ワークショップが開催された。 |
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4. 日加科学技術協力協定
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本協定の元で以下の研究を実施している。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
<日加共同先端的な住宅技術研究> (1993年〜) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
先端技術の応用を通した、末来型住宅の創造に関わる広範な研究開発情報を日加両国間で交換し、必要に応
じて具体的研究テーマを設定の上で共同研究を実施している。 具体的課題は以下の5テーマである。 ・湿気による劣化を防止するための壁体構造 ・高断熱窓の省エネルギー・防火性能 ・住宅室内環境及びエネルギー消費量調査 ・高気密住宅の換気システムの評価と標準化 ・先端的住宅ショーケース建設と性能評価 なお、目標とする成果は、1)先端技術の住宅への適用、2)先端的住宅の計画・設計手法の確立である。 |
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5. 日EU科学技術フォーラム
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1995年1月の阪神大震災後に、欧州連合の科学技術担当委員が日本を訪問し、その際建設大臣と会談 し、欧州連合と日本の間で耐震構造に関する共同研究を推進するとの合意が得られた。この合意に基づき1995年11月に担当者をシステム・情報・安全研究 所に派遣し、共同研究で取り上げるべき研究課題の概要、共同研究の実施方法(情報の交換、研究員の相互派遣、研究計画推進会議の開催等)について協議し合 意を得た。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
<日欧共同耐震研究>(1997年〜) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
欧州連合のシステム・情報・安全研究所と建築研究所は、1996年3月に構造物の実大実験に関する研究 開発協力を実施する旨の合意をした。この協力の内 容は、建築構造物の実大実験についての情報交換、研究者の相互派遣、研究開発協力の項目に関する可能性の検討などである。現在までに研究員が相互に訪問し 情報の交換をしてきた。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 日欧共同研究合同推進会議での議事録にサイン |
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共同研究で取り上げる研究課題は以下の6項目である。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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6. 各国との研究交流
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上記の他にも英国、イタリア、スウェーデン、ポーランド、フィンランド、ロシア、中国、オーストラリ ア、韓国等とも科学技術協力を実施している。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
7. 海外留学・受入れ等交流
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a)海外留学等(平成12年3月現在) 科学技術庁在外研究員制度、外国研究機関等からの招聘制度などによる留学及び派遣であり、各制度による平成2年度以降10年間の海外留学者等の数の合計 は以下のとおりである。 ・科学技術庁長期在外研究員:7人(原子力を含む) ・科学技術庁中期在外研究員:4人 ・科学技術庁パートギャランティー:8人 ・外国研究機関等からの招聘など:3人(科学技術庁パートギャランティーを除く) b)海外受入研究員 科学技術庁外国人研究者招聘制度及び科学技術庁振興調整費による外国人研究者の招聘、外国政府等負担の受け入れ研究員(但しJICAの個別・集団研修に よるものは除く)などによる外国人受入研究者は平成2年〜平成11年度の10年間に延べ176人に上っている。 c)見学者 平成2年〜平成11年度の10年間に海外から建築研究所を訪れた見学者は次表のように延べ2,479人である。 |
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技術援助 |
1. 国際研修(JICAより受入)
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(a)集団研修 ・国際地震工学部による研修 毎年実施している「地震学・地震工学コース」及び「グローバル地震観測コース」と、隔年実施の「セミナーコース」及び「個別コース」がある。 1962〜2000年7月までに延べ82ヶ国1,080人の研修生を受け入れてきている。 (国際研修事業を参照) ・「建築技術コース」の研修 毎年実施しており、建築研究所は研修計画の企画、講師の派遣、施設の見学などに協力している。 (b)個別研修 (c)第三国研修 |
2. 海外地震被害調査および復旧技術協力等
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1962〜2000年の間に計25回の地震災害調査に延べ41人が建築研究所から派遣された。特に
1985年のメキシコ地震には過去に例をみない人数が
建築研究所から調査団に加わり、被害調査及び復旧技術協力活動を積極的に行った。また、1999年のトルコ及び台湾地震の際は、国際緊急援助隊の一員とし
て職員を派遣した。
(a)インドネシア(1980年〜) (b)メキシコ(1987年〜) (c)トルコ(1993年〜) (d)中国(1990年〜) (e)ペルー(1978年〜) (f)チリ(1988年〜) (g)その他
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![]() 工具の使い方を指導する小林室長 (インドネシア・イリアンジャヤ地震災害復旧) |
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